【完結】私に許嫁なんていません! 結婚なんてお断り致します!


「なのでもう少し、時間をください」

「わかったわ。 ミツキくん、リオルのことよろしくね」

「はい」

 母はミツキくんの言葉に納得したようで、終始微笑みを浮かべていた。
 私は母に聞こえないように小さい声で「ミツキくん、ありがとう」と言った。
 ミツキくんに気を遣わせてしまったことが申し訳ないと思ってしまった。 いっそのこと、婚約破棄すると言えたらどれだけ楽だろうか……。

「ミツキくん、もっと食べてね」

「ありがとうございます」

 ミツキくんが婚約者だとわかってから間もなく一ヶ月が経つ。この一ヶ月、色んなことがあった。
 でも結婚するつもりは今のところないのだが、優しいミツキくんがそばにいると変な気持ちになる。

 あの時、シズルくんに彼氏のフリをしてほしいと頼んだ時、私本当は結婚を白紙にしたいと思っていたのだろうか……。
 白紙にしたいと願っていたはずなのに、心のどこかでそれを拒否したいと思っている自分がいる。

「ねえ、ミツキくん……」

「どうしました?リオル様」

「ちょっと、二人で話したいの。……いいかな?」

 ミツキくんは「もちろんです」と微笑みを浮かべる。

「ママ、ミツキくんと部屋で話をしてもいい?」

「ええ、もちろんよ。話してきなさい」

「ありがとう」

 私はミツキくんと共に部屋へと歩き出す。

「座って、ミツキくん」
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