【完結】私に許嫁なんていません! 結婚なんてお断り致します!

五歳の時に決まった許嫁。

* * *



「ただいま」

「おかえりなさい、リオル」

「ママ、ただいま」

 私は玄関で靴を脱ぎながら、母に「ねえ、ママ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」と話しかけた。

「どうしたの?」

 私は母に「ママ、私に婚約者がいるって本当なの?」と問いかける。

「えっ?」

「さっき、ミツキって人が私に言ったの。私とミツキさんが許嫁だって」

 私がそう話したら、母は「ああ……知ってしまったのね」と呟いた。

「じゃあもしかして、その話は本当なの?」

 母は「ちゃんと説明するから、まずは着替えてきなさい」と私に言ったのだった。

「……わかった。 着替えてくるね」

「リオルの大好きなココア、作って待ってるわ」

「うん」

 一旦部屋に戻り、私は私服に着替えた。 昨日誕生日を迎えて十八歳になったばかりの私に起こった突然の出来事に、私は頭が混乱している。
 季節は二月となり、寒さが一段と厳しい冬の日の夕方に、突然婚約者が現れるなんて、誰が一体想像しただろうか。
 高校卒業まで残り一ヶ月なのに、急に婚約者だなんて……。

「ママ、一体どういうこと?」

 リビングへ降りてママと向かい合うように座ると、ママは「実は今日、あなたに話そうと思ってたの」と話し始める。

「まさかあなたに話すより先に、ミツキくんが来ちゃうなんてね」

 一体どういうことなのだろうか? ママも知ってるってこと?
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