隠し事がある方がドキドキするでしょ?



お手拭きで手を丁寧に拭いて一口しゃぶると、ハチミツ漬けの甘さと肉の塩気が混ざりあって、この上ない幸せが口の中でパレードしている。


目を閉じて噛み締めると、更に美味しさが増して、改めて一人の良さをひしひしと感じた。




「ねぇ…、あれって律くんじゃない?」


「え、律くんって長谷 律?」




長谷、律?


芸能人の名前が聞こえてきて、思わず口が止まった。



長谷 律と言えば、イケメンコンテストでグランプリを取ってから人気が途絶えることなく、最近アイドルデビューしてコアなファンを作り続けている、あの有名な俳優。


お忍びで来ていたところに遭遇してしまったみたい。



近くで聞こえた女の子二人の会話を聞いていない雰囲気を醸し出しながら辺りを見渡すと、オレンジジュースのペットボトルを手に持ってこちらに歩いてくる、黒いキャップを被った男の人が一人見えた。


でも、キャップのせいで長谷 律だという確証がない。


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