偽装カップルの練習
そして、翌日、水族館に行った。
正直水族館はデートスポットである一方、男女のテンションに差が出ると、仲が悪くなる原因となる。以下の理由で若干迷ったのだが、仁志君が「行きたい!」と言ったからには仕方がない。
水族館の水槽の中には沢山の魚が泳いでいた。皆等しくかわいかった。
私もじっくりと魚を見ていたのだが、仁志君のそれは私以上だった。
仁志君は本当に熱中してみていた。
それを見てすごいなと思った。仁志君は魚をじっくりとあじわえる人間だと。
そして、イルカショーを見に行った。カップルならではの場所だ。……たぶん。
そこにはもうイルカがスタンバイしているようだった。
私はもうすでにどのようなショーになるのか楽しみである。
そして、イルカショーの始まりの合図とともに、アナウンスが流れる。
ちなみに場所は、仁志君が、「最前列に行きたい!」と希望するものだから、最前列だ。
最前列……濡れるからあまり好きじゃないんだけどなあ……。
そしてショーが始まる。
まずは司会の方がアナウンスして、イルカが一気にジャンプする。遠くの方でジャンプしたのだが、それが大ジャンプだったという事もあり、水が跳ねて、こちらまで飛んできた。
正直軽く……不快ではあるのだが、相変わらず仁志君は楽しそうだ。
これを見たら意地悪をしたくなった。
そう、本当のカップルではないけど、今は偽装カップルだ。
ならば、
「きゃあ」
そう言って、仁志君に抱き着きに行った。彼はドキドキしている顔をしている。悪戯成功だ。
「これは、カップルの練習なんだから、当たり前のことだよ」