天才と呼ばれた彼女は無理やり入れられた後宮で怠惰に過ごしたい!②
素直になれるまで待っていて
「騎士団のやつらから花を贈られていたんだって?」
ウィルバートがティータイムしながら、話を切り出してきた。
「あら?情報早すぎよ!……アナベルなの!?」
お茶を淹れつつ、アナベルは違いますよ!と言う。でも今日の午前中に起こったことなのに耳に入るのが早すぎるわ。
「ちょうど午前中、騎士団のところで訓練しててさ、警備から帰ってきた騎士が王妃様は素晴らしいとか言うから、なにがあった?と尋ねたんだ」
そしたら、バラの花を贈っていたんだー!とウィルバートがなぜか悔しげに言う。
「ウィルバート、言っておくけど、対抗して大量の花を贈ってこないでよ!?財政の無駄遣いしないでよ!?」
「お嬢様、そこ財政の問題に普通の女性は絡めませんよ!」
ヒソヒソと耳打ちしてくるアナベルだった。ウィルバートが、目を丸くした。
「なっ、なんでわかったんだ!?」
やっぱり……と私は半眼になった。
「あいつら油断も隙もないな!」
「まあ、いいじゃないの。好意を持たれるのは悪い気はしないわ」
「オレは嫌だ」
えっ!?空耳?……じゃなさそう。拗ねたように言う彼。
「リアンが他のやつから好意を持たれてるなんて嫌だ!」
「どうしちゃったのよ!?ウィルバートが駄々っ子みたいなんだけど!?」
いきなり子供っぽい顔になっている。王妃が皆に嫌われてるより良くないかしら?私は首を傾げた。
「陛下、みっともないヤキモチはやめてください」
影のように護衛をしているセオドアが我慢できなくなったのかツッコミをいれた。
「ヤキモチって騎士団の人たちに?」
「セオドア!口を出すなよ」
否定しないのね……セオドアは肩をすくめる。ウィルバートがイライラしている。
「怒っているの?」
「子どもっぽいところを見せてしまった自分に怒ってる。リアンや騎士たちにじゃないよ」
ウィルバートが可愛すぎんだけど!?私はフルフルと震えつつ、笑いを必死に堪える。カップを持つ手が震えてしまうわ。
「なんで、リアンは嬉しそうなんだ?」
「だって、ウィルバート、最近、王様らしい顔だったから、私は焦っちゃってたの。なんだかウィルバートに置いていかれそうな気がして……」
それなのに目の前には可愛い王様がいる。
「リアンに良いところ見せようとしていたかもな……あんまり愚痴や悩みを見せないようにして、良き王になろうと思ってた。だって、才能あふれる君のことを傍に置いてしまったからには、そうしないと、なんだか許されない気がした」
「そんなことないわよ!私、ウィルバートの悩んでることや考えてることはどんなくだらないことだったとしても知りたいわ。力になりたいもの!」
ウィルバートは私の言葉に笑った。心底嬉しそうに笑った。
「じゃあ、リアンのことも教えてほしい。……なんでこないだ鞄一つしか買わなかったんだい?」
ブッとお茶を吹き出しかけた。その話を持ってくる!?
「そそそそそれは!えーと……だから、財政の無駄遣いをしたくないのよ」
そうかなぁ?とウィルバートは首を傾げた。さすが同じ先生に学んだだけあり、鋭い。
「まあ、いいか。とりあえず今回はそういうことにしておこうかな。ごめん、今、悔しくてちょっと意地悪した」
「負けず嫌いな王様ね。でも私も負けないわよ」
「リアンには一生勝てなくて良いよ」
木漏れ日のさす午後、私とウィルバートは視線を合わせて、微笑んだ。そして、もう少しだけこの怠惰に過ごす時間を楽しみたいと思った。忙しい王様の彼はすぐに公務に戻ってしまうから、あっという間に怠惰な楽しい時間は過ぎてしまう。
……行かないで、もう少しだけ居てほしいと私はウィルバートの服の裾を掴んで、止めて、言ってしまいそうになる。でも言えない。私はいつも涼しい顔して、行ってらっしゃいと言い、お茶を飲んで見送る。
素直になれないのは自分の心を守ってる弱い私。そんなに弱いはずじゃないのに、ウィルバートの前じゃ、そうなってしまう。
戦になんて行かないで。私の知らない大人の顔をしないで。王様でいる時に見せるちょっと黒くて辛い顔は見たくないの。他の女の人の傍にいないで。ウィルバートが笑顔でいれるなら、私はどんなことでもしたいの。
……そんな我儘で傲慢なこと考えてるなんて言えない。
誰かを想うことって、こんなに胸が苦しくなることなんだと、ウィルバートのせいで、初めて知った。
ウィルバートのことを一番、世界中で誰よりも愛してるわ。
私が素直にそう伝えられるまで、お願いだから、待っていて。
ウィルバートがティータイムしながら、話を切り出してきた。
「あら?情報早すぎよ!……アナベルなの!?」
お茶を淹れつつ、アナベルは違いますよ!と言う。でも今日の午前中に起こったことなのに耳に入るのが早すぎるわ。
「ちょうど午前中、騎士団のところで訓練しててさ、警備から帰ってきた騎士が王妃様は素晴らしいとか言うから、なにがあった?と尋ねたんだ」
そしたら、バラの花を贈っていたんだー!とウィルバートがなぜか悔しげに言う。
「ウィルバート、言っておくけど、対抗して大量の花を贈ってこないでよ!?財政の無駄遣いしないでよ!?」
「お嬢様、そこ財政の問題に普通の女性は絡めませんよ!」
ヒソヒソと耳打ちしてくるアナベルだった。ウィルバートが、目を丸くした。
「なっ、なんでわかったんだ!?」
やっぱり……と私は半眼になった。
「あいつら油断も隙もないな!」
「まあ、いいじゃないの。好意を持たれるのは悪い気はしないわ」
「オレは嫌だ」
えっ!?空耳?……じゃなさそう。拗ねたように言う彼。
「リアンが他のやつから好意を持たれてるなんて嫌だ!」
「どうしちゃったのよ!?ウィルバートが駄々っ子みたいなんだけど!?」
いきなり子供っぽい顔になっている。王妃が皆に嫌われてるより良くないかしら?私は首を傾げた。
「陛下、みっともないヤキモチはやめてください」
影のように護衛をしているセオドアが我慢できなくなったのかツッコミをいれた。
「ヤキモチって騎士団の人たちに?」
「セオドア!口を出すなよ」
否定しないのね……セオドアは肩をすくめる。ウィルバートがイライラしている。
「怒っているの?」
「子どもっぽいところを見せてしまった自分に怒ってる。リアンや騎士たちにじゃないよ」
ウィルバートが可愛すぎんだけど!?私はフルフルと震えつつ、笑いを必死に堪える。カップを持つ手が震えてしまうわ。
「なんで、リアンは嬉しそうなんだ?」
「だって、ウィルバート、最近、王様らしい顔だったから、私は焦っちゃってたの。なんだかウィルバートに置いていかれそうな気がして……」
それなのに目の前には可愛い王様がいる。
「リアンに良いところ見せようとしていたかもな……あんまり愚痴や悩みを見せないようにして、良き王になろうと思ってた。だって、才能あふれる君のことを傍に置いてしまったからには、そうしないと、なんだか許されない気がした」
「そんなことないわよ!私、ウィルバートの悩んでることや考えてることはどんなくだらないことだったとしても知りたいわ。力になりたいもの!」
ウィルバートは私の言葉に笑った。心底嬉しそうに笑った。
「じゃあ、リアンのことも教えてほしい。……なんでこないだ鞄一つしか買わなかったんだい?」
ブッとお茶を吹き出しかけた。その話を持ってくる!?
「そそそそそれは!えーと……だから、財政の無駄遣いをしたくないのよ」
そうかなぁ?とウィルバートは首を傾げた。さすが同じ先生に学んだだけあり、鋭い。
「まあ、いいか。とりあえず今回はそういうことにしておこうかな。ごめん、今、悔しくてちょっと意地悪した」
「負けず嫌いな王様ね。でも私も負けないわよ」
「リアンには一生勝てなくて良いよ」
木漏れ日のさす午後、私とウィルバートは視線を合わせて、微笑んだ。そして、もう少しだけこの怠惰に過ごす時間を楽しみたいと思った。忙しい王様の彼はすぐに公務に戻ってしまうから、あっという間に怠惰な楽しい時間は過ぎてしまう。
……行かないで、もう少しだけ居てほしいと私はウィルバートの服の裾を掴んで、止めて、言ってしまいそうになる。でも言えない。私はいつも涼しい顔して、行ってらっしゃいと言い、お茶を飲んで見送る。
素直になれないのは自分の心を守ってる弱い私。そんなに弱いはずじゃないのに、ウィルバートの前じゃ、そうなってしまう。
戦になんて行かないで。私の知らない大人の顔をしないで。王様でいる時に見せるちょっと黒くて辛い顔は見たくないの。他の女の人の傍にいないで。ウィルバートが笑顔でいれるなら、私はどんなことでもしたいの。
……そんな我儘で傲慢なこと考えてるなんて言えない。
誰かを想うことって、こんなに胸が苦しくなることなんだと、ウィルバートのせいで、初めて知った。
ウィルバートのことを一番、世界中で誰よりも愛してるわ。
私が素直にそう伝えられるまで、お願いだから、待っていて。