ちょっと留守にしていたら家が没落していました 転生令嬢は前世知識と聖魔法で大事な家族を救います

プロローグ

 ランデンベルグ国は今、春のはずなんだけど、ひゅーっと木枯らしが通り過ぎていったような気がするのはなぜかしら。

 実際に春の少し強い風がわたしの赤い髪をもてあそんで通り過ぎてはいくものの、心の中に吹いているのは春風なんてかわいらしいものではない。

 コーフェルト聖国に国費留学していたわたし、マルガレーテ・ハインツェルは、一年間の留学期間を終えて我が家ハインツェル伯爵家へ帰ってきた。

 そう、帰ってきたはずだった、のだけれど。

 ……なんかわたし、今、浦島太郎の気分がわかった気がするわ!

 ふと、前世で子どもの頃に読んだおとぎ話の主人公の気持ちになりかけたわたしは、現実逃避しそうになる頭をしゃっきりとさせるべくぶんぶんと首を横に振った。
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