鈴の願いが鳴るころに誓いを

ふたりぼっちの世界

僕の日常はこれといって何も変わらない
でも僕の世界に少しだけ色がついたような新しい音が見つかった
僕は帰りのホームルームが終わるとすぐ教室から出る。
校門から出ようとしたとき足音がして反射的にそっちを見ると黒い髪にスカートをふんわり揺らしながら涼乃さんが走ってきた
僕のところに着くと少し息を切らしていて手を動かしている
手話?だろうか
わからずポカンとしていると涼乃さんはポカンとしている僕に気づいて慌ててノートを取り出して"見せたいものがあるからついてきて!"と書いて見せて僕の手を取って素早く校門を出た
部活や下校中の生徒の視線が痛いからそんなに目立たないでほしいけど無理もない
涼乃さんは目もパッチリしていて風になびく髪はさらさらで透明感のある色白な肌に低身長で天使みたいだ
そんなことを思う僕は変態気質なのだろうか
いや間違いなく誰の目にも涼乃さんはこう映っているはず
ただでさえ視線を集める涼乃さんと目立たない存在すら知られているのか危うい僕が一緒にいるんだ
そんな組み合わせ周りからしたら不思議でしかない
我ながらどうして僕なんかにかまってくれるんだろう
涼乃さんに連れられるままにたどりついたのは学校から少し離れた隠れ家みたいな神社
綺麗な赤い鳥居にはたくさんの風鈴が風に揺れてリンッと音を奏でていた
涼乃さんは目を輝かせる僕に満足そうな顔をしていて僕は涼乃さんの真似をして口パクで「ありがとう」と言ったらにこっと笑った
伝わったのだろう
なんだか心が通じたみたいで嬉しくなる
涼乃さんと出会って喜んでばかりかりだなと思って今度は僕が涼乃さんの手を取って跡の鳴る鳥居を2人でくぐった
リンッという音を最後に神社はなんの音もしなくなった
少しでも風鈴の音が聞こえてもおかしくないのに
僕たちは歩き出した
どこへ行っても誰もいない
僕たちだけだ
賽銭箱の前まで来て2人でお祈りをした。
僕は受験合格、それと欲張りかもしれないけど涼乃さんとこれからも一緒にいられますように。
お祈りし終わって涼乃さんの方を見るとまだ目を閉じて両手を合わせていた
その横を巫女さんが通ったような気がした
涼乃さんみたいな長い黒髪を高い位置で1つにまとめていた
涼乃さんがお祈りを終えて帰ってきたのでなんてお祈りしたの?とこっそりならっていた手話まだらつたないけれど披露した
涼乃さんは目を輝かせてから人差し指を口の前で立てた
秘密…ということかな
そう言われると気になるな
すると涼乃さんはなにか手話をし始めたけどわからなくて自分のノートに"ごめん少ししかわからないです"と書くと涼乃さんはしゅんとして"いつか教えてあげる"と書いてくれた
そのいつかまで涼乃さんは僕といてくれる
そう思うと待ち遠しくて楽しみで
"もっと手話できるようにしますね!"と書いて涼乃さんが嬉しそうにするのが自分のことのように嬉しい
涼乃さんのそんな顔をもっと見たい
いつの日からか僕は涼乃さんが喜びそうなことを考えるようになっていた

そうか。僕は涼乃さんが好きだ
今まで自分を蔑ろにしてきたから気づこうとしなかった気持ち






好きだ。
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