真夜中のシャンプー屋

第1話 会社員カエデ

しまった、もう無理。
こんなに呑むんじゃなかった。

会社員、中村カエデは心から後悔した。
繁華街の隅っこで。

明日は出張で朝早い。
このまま帰ったら多分バタンキューだ。
28年の人生経験がそう告げている。
いや飲酒は20歳からだから8年?
そんな事はどうでもいい!

バタンキューは良しとしても!
お風呂には入りたい!
いや、風呂は最悪入らなくてもいい。2Dayだ2Day。
ただ、髪だけは...髪だけは洗いたい!
身体は服でカバーしている!守られている!
しかし、髪は1日中、むき出しだ!さらし物だ!

...顔はなんとか洗ってやる!
帰って髪を濡らし、シャンプーを出し、まんべんなく髪にからめ、
それから泡が残らぬように流し、タオルドライしてドライヤーを...

うん、無理!自信ない!
これもあのクライアントのせいだ!
あいつがあんな嫌味を言わなきゃ、こんなに呑まなかったのに!
私の髪になんてことをしてくれたんだ!

そこで、カエデは見つける。
とある店を。

シャンプー屋...?はい?

ヘッドマッサージでも美容室でもない。
ただ、シャンプー屋。
一間ほどの入口。ガラス扉。
中には、黒い服を着た髪の長い女性。
よく見るシャンプー台が奥に一個。

なに、ここ。こんなのあったかな。
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