真夜中のシャンプー屋
「玉木さん!」

「…?」

「あ、すいません、客じゃないです」

て...え?なんだ?この子?
見た目ドストライクなんですけど。
繁華街の天使?

「タイセイ君、遅いぞ」
「はい?遅いって」

邪魔すんなじいさん、
いや、遅いってなんだよ。こっちはこの寒いのに汗だくだよ

「こういう場合、すぐ見つけないと。ぼったくりにあったらどうする」
「いや、玉木さん、無理ですって。GPSは馬鹿だし」
「行きそうな場所を探すんだよ。ここは昔、よく行ってたスナックでな」
「そんな情報ないですよ」
「後で教えてやる。メモっておけ」

ウロウロする気満々か!

「あのー」

「あ、す、すいません、俺、介護福祉士で。この人の介護を」
「俺は女性がいいって言ったのに」
「だから男性にされたんですよ」
「何度か逃げれば女性に変えてくれるかな」
「勘弁してくださいよ。ボケたかと思いましたよ」

女性がポンと手を叩く。
「ああ、痴呆老人!」

おいおい。

「それを言うなら、徘徊老人...」
「あ、そっかー」
「面白いなぁ、咲楽ちゃんは」

じいさん、にこにこだな。
咲楽ちゃんていうのか。メモメモ。

「シャンプー500円らしいぞ。やってもらうかな」
「されていきますかー」
「玉木さん、俺、次があるんですけど」
「いいよ、帰っても」
「そうは行きませんよ!帰りましょう!」

「お邪魔されましたー」

その通りですが...。
じいさん、手振ってら。
ま、ご機嫌だからいいか。

...今度来ようかな。
真夜中のシャンプー屋。
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