真夜中のシャンプー屋

第6話 シャンプー屋咲楽

なんだろ、これ。
いつまでたっても凍える母娘が出てこない。
広告が嘘ついてんのかな。

シャンプー屋オオヌキ咲楽は無料ゲームにハマっていた。
暇つぶしにちょうどいい。
隣の居酒屋にWi-Fiパスワードをもらったし。

一人最高だなぁ。
先輩美容師のご機嫌も取らなくていいし。
お客さんに愛想笑いしなくてもいい。
なんてたって自分の店だし。

カラーがどうのトリートメントがどうの
炭酸がどうの小顔カットがどうの
うん、ごめん、覚えらんない

こないだのガールズバーの痴呆おじいさん、面白かったな。
ここはスナックじゃなくて、無料案内所だったはずだけど。
まあ痴呆だから仕方ないか。

あのガタイのいい介護の人も大変だな。
ああいう仕事は絶対無理。無理無理無理の100乗。
あれって優しい人がなるのかな。
どうりでなりてが少ないわけだ。

あの酔っ払いお姉さんは無事に帰れたかな。
なんかサイコーとか叫んでたけど。
きっとオボエテないな。

てか、ガチガチワックスはいただけない。
時間がかかった。失敗した。
でも、ワックスで料金追加するのも、面倒くさい。

うまくできる方法ないかな。検索検索。
車のワックスじゃないってば...洗車かよ
ええ、予洗いしてトリートメントを先に?!

なんだよートリートメントーむーむーむー
買ったら負けな気がする。
あのおじさんもなんか勧めてたな。
剥げてるのって、中国では賢い象徴だったっけ。
うーん、洗剤だと思って買えばいいのかな。
...洗剤じゃだめなのかな?

そういうお客さんが増えたら考えよう。
クラブのお姉さんぽい人も固めてたしなぁ。
青いスカーフ、どうしようかな。
いつか誰か使うかもしれないから取っておこうか。
昔の映画の女優さんみたいにかぶって逃避行とか。
あるよね、そう言う場面。

...だからこの逃避行の凍える母娘はどこにいるの?
もういいや、これは削除して次に行こう。

誰かを助けたいわけでもないから。

真夜中のシャンプー屋
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