真夜中のシャンプー屋
「男はいいなぁ」
「なに、どしたどした」
「だって、男は年とっても、ねえ?女は、ねえ?」

翔君とやら、私の言葉を受けて考え込む。
いや、そんな考えないで。

「んーと、それは女は若い方がいいけど、男はどっちでもいいってこと?」
「んー、そういうことかな。男は若くてもおじさんでも、女性にもてるでしょ?」
「ひどいおじさんもいるけどな!」
「それは置いといて、なんていうの、年の取り甲斐がないっていうか」
「ふむふむ」
「大体さ、私、思ったの。マウントってあるじゃん」
「あるねー、女あるあるね」
「あれ、なんで女に多いか、わかる?」
「わからん!」
「女は登る山がないからよ!」

翔君とやらが、ハッとした顔で私を見た。

「すげー!カエデちゃん、頭いいー!」
「あ、どもども」

なぜかへらへらしてしまった。

「そっかぁ。男は地位とか役職?とかあがったりするもんな!」
「そうよ。男は登る山があるの!」
「なるほどなぁ。なんか勉強になった。使っていい?」
「どーぞー」
「どーもー」

なに楽しいカモ。

「でもさ、男は登れなくなると大変だぜぇ」
「うん?」
「ほらさ、引きこもりって男が多いって言うじゃん」
「ああ、だよね」
「一回社会から脱落すると、なかなか戻れない」
「うんうん、プライドもあるだろうし?」
「そうそう、そうなると、女性の方がチャンスはあるよな」
「確かに。登る山がない分、落ちる事もないのか」
「そーゆーこっと!」

でもなんだかな。山がないのはつまらない。
でも登るのはシンドイ。

「翔君はなんでこの仕事してるの」

なんだ、この質問。
どこかのキャバクラ親父みたいだな、私。

「俺?んー、色々ありまして、先輩に誘われて」
「じゃあ、ここに来た私と一緒だ」
「色々あったん?」
「ないけど!」
「いや、色々あるでしょ。恋愛相談なら乗りまっせ」
「ホストに恋愛相談とかおかしくない?」
「おかしいか」

屈託なく笑う翔君とやら。
売り上げあるのかな、この子。
とっても話しやすいけど、イケメン的なセリフ、苦手そう。
はっ、もしや、これが手なの?そうなの?社会こわ!


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