真夜中のシャンプー屋

第2話 ホスト翔

ああ、まったく、ついてない。
せっかくここまで育てたのに。

ホスト、ミズキ翔はネオンの光る明け方の空を仰いだ。
繁華街の隅っこで。

まさか、枝に取られるとはなぁ。
あの野郎、いつの間に俺の客を。
俺、ホスト、向いてないのかな。
完全に舐められてるじゃん。
ああ、もうやる気でねー。
もうどうでもいいわー!

帰って、このメイクとガチガチのワックス落として。
ああ、面倒くさいな。
身なりに一時間もかけて何も得られなかった。
いやむしろ失った。
中学の頃は、起きると同時にサッカーに飛び出した。
あの時、髪なんてセットしてたっけな。

...なんだ、あの店。
シャンプー屋?こんな店あったか?

一間ほどの入口。ガラス扉。
中には、黒い服を着た髪の長い女性。
よく見るシャンプー台が奥に一個。

カラン

「いらっしゃいませー」

女性の金色の瞳が光る。
およ、かなり美人。
しかし、金はなさそう。500円て。
こんな店より稼げる店紹介してやるのに。

「シャンプーでよろしいですか?」

「あ、は、はい」
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