真夜中のシャンプー屋

第4話 キャバクラ嬢麻衣

本当に信じらんない。
私のお金で食べてるくせに。

キャバクラ嬢麻衣は、怒っていた。
先ほどから繁華街をあてもなくウロウロしている。

ああ、うるさい、スカウトの馬鹿が。
私の顔くらい知ってなさいよ。Noahの麻衣よ。
気安く声かけんじゃないっつーの。
サトル、どこ行ったのよ。
男連れならうるさくないのに。

ああ、髪の毛が痛い。
今日はヘアアレンジを失敗した。
無理やりピンで止めてるから、髪が引っ張られる。
それなのに、サトルの奴。
なんか七五三みたいだなって。
馬鹿にするにもほどがあるわ。
ヒモの癖にお世辞も言えないなんて。

グレージュだのアッシュだの流行る中、
あえての黒髪ストレートで挑んでるのよ。
なんだかんだ、男はこういうのが好きなんだって。
それを七五三て。せめて成人式じゃない?
もう私、21よ。もう?いや、まだ?

ああ、髪をなんとかしたい。
ピンを取りたい、でも取ったらボサボサ。

…シャンプー屋?
なにこの店。シャンプーだけってこと?
500円?安!この繁華街でやってけんの?

中に入ったら怖いお兄さんが...。
ガラス張りでそんなわけないか。
シャンプー屋といいつつ他の物を売ってる?
いやあ、それはそれで、買わなきゃいいわけで。

髪が限界。
もういいや、はいろ。

カラン

「いらっしゃいませー」

なにその黒髪。
どうやったらそんな艶出せるのよ!
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