真夜中のシャンプー屋

第5話 介護福祉士タイセイ

なんてこった。
こんな人混みの中、見つけられるわけがない。
なんだ、このGPS。
そこは車道の真ん中ですぞ。

介護福祉士・河合タイセイは繁華街を彷徨っていた。
とうとうボケたのか。じいさん。
俺が在宅介護してる時にいなくなるなんて。
ああ、叱られる。まずいまずいぞ。

大体、年寄りがこんな繁華街に住むなよ。
てか、住むとこあったのかよ、この町。
華やかな人達とやらが所狭しと歩く。
会社の黄色いエプロンの間抜けな事よ。
客引きから、声もかけられねえ。

GPSは動いていない。車道のど真ん中で。
どこにいるかはアレだが、じっとしてるってことだ。
頼むから、そのままいてくれ。
老人がじっとしてたらむしろ目立ちそうだし。
いやもしやぼったくりの店に?

「そうですかー。ここにスナックが」
「そうそう、いい女だったんだよ」
「それはよかったですねー」
「今時はガールズバーとかつまらん」
「行ったことあるんですか」
「ある。やはり流行には乗らんとな」
「おさわり禁止でしたっけ」
「そうそう、しゃべるだけで金をとる」

うわあああ、いたああああ。
神様、ありがとぉぉぉぉ。
なんだ、ここ?シャンプー屋?
何してるんだ?あのじいさん。
のんびり、かわいい女子と話しやがって!

カラン

「いらっしゃいませー」
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