カナリアの教室、秘密の恋を
「あと昨日のあれ考えたんだけど」

数本草を抜いた後、手に付いた砂をパパッと払った。

昨日のあれ、とはたぶん私が尋ねたことだ。

「なんだっけ?ほら、なんたらかんたら~から見つけ出してくれるかっていうあれ」

「…、“もし私がたくさんの人たちの中に埋もれて自分を見失っていたら、見付けて出してくれますか?”」

「そう、その答え!一晩考えた!」

「…なんですか?」

恐る恐る崎本先生の方を見た、一度逸らしてしまった視線を交わすのは少し勇気が必要で。

だけど崎本先生は私を見て笑っていた。

「無理矢理にでも引っ張る」

優しい瞳で。

「…考えた割にはざっくりですね」

せっかく笑ってくれたのに愛想のない言い方をしてしまった。人と話すのに慣れてなさ過ぎてどんな顔をしたらいいのかわからなくなる。

「そうか?なかなか出来ないと思うけどな、やっぱ力がないと無理だろー」

「あ、物理的な意味なんですね」

「力には自信があるからな!だから安心して迷え西山!」

…スーツの上からじゃわからないけど、普段そんなに鍛えてるのかしら?白くてキレイな手からは想像できないけど。
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