カナリアの教室、秘密の恋を

5.

あれは何だったのかしらー…?



昨日からずっと頭の中でぐるぐると、占領していて他のことを考える隙間をくれない。


何度も唇の感触を確かめたくなる、あんなの初めてだったから。


起きてから寝るまで、また起きてから今も考えが止まらなくて気付けばお昼休みだった。  

いつも通りお弁当を持ってこっそり教室を出ようと…

「今日どこで食べるー?」

「外行く?あ、でも暑いからLL教室は?」

……。

聞き耳を立ててたわけじゃないの、彼女たちの隣を通り過ぎようとして聞こえたの。

“高校入学して3ヶ月、自分から話し掛けたことあったか?”

ふと崎本先生の声が聞こえたような気がした。

“人間って案外簡単なものなんだよ”

本当に、そうなのかしら?

これが普通だと思っていた私の世界は私が勝手に作って来たものだとしたら、ここで何か言ったら変わるのー…?

「あの…、私も一緒にいいかしら?」

次の瞬間にはもう声に出していた。私は意外にもバイタリティのあるのね、自分で驚いたわ。


「「え?」」


でも彼女たちは丸くした目をお互いに合わせたから。

あぁ、これは。

もうわかるわ、言われなくてもわかる。

ほら意味なかったじゃない、慣れないことはするものじゃないわねー…
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