カナリアの教室、秘密の恋を
2.
そう、あれは高校1年生の6月―…
高校入学して2ヶ月、校則を守れだの何だのうるさくて嫌になっちゃう。リボンは大きいのがいいし、スカートはフリルがあった方が可愛いじゃない、それの何がいけないのかわからないわ。
「6月って紫外線が強くて嫌よねぇ」
真っ黒の日傘を差して校門をくぐる、生徒たちが私を見てざわざわ…何を言ってるのかはよくわからないけど指さしたりコソコソしちゃって。誰も話しかけてこないし、目も合わせようとしない。
そんなに不思議に映ってるのかしらね、私は。
おかげで6月になった今でも友達…と呼べる人はいないけど、特に困ってもないから。
一言も声を発することなく教室に着いた。
自分の席に座って授業の準備をする、ホームルームが終わったらそのまま1限目が始まるから。
えっと1限目は英語ね…英語の授業は好きなのよね。異国に行ったみたいで自分じゃないみたいに思えて。
だけど、朝は少し苦手で。
静かに英語が流れ始めるから、あまりに心地よくて瞼が重くなる。必死に教科書に綴られた英文を見て世界に入り込もうとするけど、すればするほど瞼は重くなっていく。
近くにいるはずなのに遠くから聞こえているような先生の声、英語だから余計に遠く感じて。
だけど、この声は安らいで好きなのよね。
柔らかくて透き通ってるような耳心地がたまらない声…
あ、瞼が限界だわ。