カナリアの教室、秘密の恋を

3.

「失礼します」

職員室の雰囲気は好きじゃない、入った瞬間ジロッて見られるから。ほら、生活指導の小山先生がズカズカと近付いて来て…  

「西山さん、ノートありがとう!こっち持って来てくれる?」

「崎本先生…」

私を見付けた崎本先生が立ち上がって手を上げた。こっちこっちと手を振って、おかげで小山先生に近付かれることなく事なきを得た。

「ありがとうね、そこ置いてくれる?」

「はい」

崎本先生の机はプリントや教科書が山積みで、片付けは苦手な人なのかしら…?先生だからと言ってこんなことが得意とも限らないものね。

「じゃあ私はこれで」

用は済んだし、もうお昼の時間だわ。お腹も空いたし早く教室に戻ってお弁当を、って思ったのに。

「西山さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど?」

すっと崎本先生が立ち上がって、いいかな?と微笑む。

柔らかい表情はまさに先生らしく、でも何より私は…


その声が耳に残って仕方ない。


「…何ですか?」

その声をもっと聞きたくて。
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