<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
ミラージュの物語 1
ガラガラガラガラ……
青い空の下、草原を馬車が走る。
崩壊したグランダ王国を後にした私達。私の主、レベッカ様は久しぶりに力を使い過ぎた為に、今は疲れて荷台の上で気持ちよさげにお昼寝中。そんなレベッカ様を私はじっと見つめていた。
その時、突然馬車を走らせていたサミュエル王子が話しかけてきた。
「ミラージュ、レベッカはまだ寝ているのかい?」
「ええ、そうですね。久しぶりに力を使ってお疲れになったようです」
「え? 何だい? 力って」
サミュエル王子が一瞬私の方をチラリとみる。
「あ」
しまった……サミュエル王子はドラゴンである私を見ても左程驚かなかったから、うっかりレベッカ様の力の秘密を漏らしてしまった。
「い、いえ……。何でもありませんわ」
するとサミュエル王子は手綱を握りしめながらのんびりと言った。
「ああ……そうか。力って言うのは、あの力の事かい?」
「え!?」
まさか、あのグランダ王国での天変地異の原因がレベッカ様だと気づかれたのだろうか?
「確かに凄かったよな~」
サミュエル王子は青い空を眺めている。どうしよう……つい口を滑らせてしまった。レベッカ様に何と言い訳をすれば良いだろう。
すると……。
「この馬車を呼び寄せた力のことだろう?」
「え?」
「何せ、口笛を吹くだけで動物を手なずける事が出来るんだから……。いや、本当に凄いよね」
サミュエル王子は笑顔で私の方を振り向く。それを見て私はクスリと笑った。本当におおらかな人だ。この人になら私の大切なレベッカ様を託してもいいかもしれない。
「ねえ、ミラージュ。レベッカは眠ってしまったんだ。もしよければ隣に座って話し相手になってくれないかな? ずっと単調な道ばかり続いているから、いい加減眠くなってくるところだったんだよ」
「ええ、それならお安い御用ですわ」
返事をすると、スカートをたくし上げてサミュエル王子の左側にストンと座った。すると早速サミュエル王子が尋ねてきた。
「ねえミラージュ。僕はドラゴンの事、ほとんど知らないんだ。もしよければ僕が今から質問する事に答えてくれないかな?」
「そうですね……私の何を知りたいのです?」
「そうだな……まずは食べ物! ドラゴンの姿の時も人の姿の時も食べるものは同じものかな?」
「ええ……まあ、多分同じなんじゃないですか……というか、私はレベッカ様と一緒に暮らすようになってからはドラゴンの姿で食事はしたことありませんから」
「そうなのかい? そういえばドラゴンて確か群れか、家族で暮らすって聞いたことがあるんだけど、何故ミラージュはドラゴンなのに人間のレベッカと一緒に暮らしているんだい?」
「それ……は……」
サミュエル王子の質問に、私はずっと昔の出来事を思い出してしまった。
「あ……。もしかしてまずい事聞いてしまったかな? ごめん。今の話は忘れてくれないか? これからずっと一緒に旅する仲間になるわけだから、君たちの事を知っておきたいな~って思っただけなんだ。でも悪かったね。今の質問は触れてはいけない内容だったんだよね?」
「いいえ……そんなことはありませんが……」
しかし、サミュエル王子はドラゴンの姿の私を見た時悲鳴を上げたり、驚いたりすることも無く、私をレベッカ様の友達と言ってくれた。
レベッカ様……。
不思議なことに何故かレベッカ様の一族は普通の人間の異性に嫌われやすい傾向にある。まあ、中にはレベッカ様の持つ力に本能的に惹かれて、利用してやろうとする輩も過去にはいた。恐らくはあのランス王子もその輩の1人だったのかもしれない。
けれど、目の前にいるサミュエル王子にはそのようなけしからん気配は感じ取れない。きっと純粋にレベッカ様を思ってくれているのかもしれない。
……彼になら私とレベッカ様の話をしてもいいかもしれない。
「サミュエル王子……」
「ん? 何だい?」
「私とレベッカ様のお話……聞いていただけますか?」
「聞かせてくれるなら嬉しいね」
サミュエル王子は笑顔で答える。
「分かりました。お話しますね」
そして私は自分の事を話し始めた――
青い空の下、草原を馬車が走る。
崩壊したグランダ王国を後にした私達。私の主、レベッカ様は久しぶりに力を使い過ぎた為に、今は疲れて荷台の上で気持ちよさげにお昼寝中。そんなレベッカ様を私はじっと見つめていた。
その時、突然馬車を走らせていたサミュエル王子が話しかけてきた。
「ミラージュ、レベッカはまだ寝ているのかい?」
「ええ、そうですね。久しぶりに力を使ってお疲れになったようです」
「え? 何だい? 力って」
サミュエル王子が一瞬私の方をチラリとみる。
「あ」
しまった……サミュエル王子はドラゴンである私を見ても左程驚かなかったから、うっかりレベッカ様の力の秘密を漏らしてしまった。
「い、いえ……。何でもありませんわ」
するとサミュエル王子は手綱を握りしめながらのんびりと言った。
「ああ……そうか。力って言うのは、あの力の事かい?」
「え!?」
まさか、あのグランダ王国での天変地異の原因がレベッカ様だと気づかれたのだろうか?
「確かに凄かったよな~」
サミュエル王子は青い空を眺めている。どうしよう……つい口を滑らせてしまった。レベッカ様に何と言い訳をすれば良いだろう。
すると……。
「この馬車を呼び寄せた力のことだろう?」
「え?」
「何せ、口笛を吹くだけで動物を手なずける事が出来るんだから……。いや、本当に凄いよね」
サミュエル王子は笑顔で私の方を振り向く。それを見て私はクスリと笑った。本当におおらかな人だ。この人になら私の大切なレベッカ様を託してもいいかもしれない。
「ねえ、ミラージュ。レベッカは眠ってしまったんだ。もしよければ隣に座って話し相手になってくれないかな? ずっと単調な道ばかり続いているから、いい加減眠くなってくるところだったんだよ」
「ええ、それならお安い御用ですわ」
返事をすると、スカートをたくし上げてサミュエル王子の左側にストンと座った。すると早速サミュエル王子が尋ねてきた。
「ねえミラージュ。僕はドラゴンの事、ほとんど知らないんだ。もしよければ僕が今から質問する事に答えてくれないかな?」
「そうですね……私の何を知りたいのです?」
「そうだな……まずは食べ物! ドラゴンの姿の時も人の姿の時も食べるものは同じものかな?」
「ええ……まあ、多分同じなんじゃないですか……というか、私はレベッカ様と一緒に暮らすようになってからはドラゴンの姿で食事はしたことありませんから」
「そうなのかい? そういえばドラゴンて確か群れか、家族で暮らすって聞いたことがあるんだけど、何故ミラージュはドラゴンなのに人間のレベッカと一緒に暮らしているんだい?」
「それ……は……」
サミュエル王子の質問に、私はずっと昔の出来事を思い出してしまった。
「あ……。もしかしてまずい事聞いてしまったかな? ごめん。今の話は忘れてくれないか? これからずっと一緒に旅する仲間になるわけだから、君たちの事を知っておきたいな~って思っただけなんだ。でも悪かったね。今の質問は触れてはいけない内容だったんだよね?」
「いいえ……そんなことはありませんが……」
しかし、サミュエル王子はドラゴンの姿の私を見た時悲鳴を上げたり、驚いたりすることも無く、私をレベッカ様の友達と言ってくれた。
レベッカ様……。
不思議なことに何故かレベッカ様の一族は普通の人間の異性に嫌われやすい傾向にある。まあ、中にはレベッカ様の持つ力に本能的に惹かれて、利用してやろうとする輩も過去にはいた。恐らくはあのランス王子もその輩の1人だったのかもしれない。
けれど、目の前にいるサミュエル王子にはそのようなけしからん気配は感じ取れない。きっと純粋にレベッカ様を思ってくれているのかもしれない。
……彼になら私とレベッカ様の話をしてもいいかもしれない。
「サミュエル王子……」
「ん? 何だい?」
「私とレベッカ様のお話……聞いていただけますか?」
「聞かせてくれるなら嬉しいね」
サミュエル王子は笑顔で答える。
「分かりました。お話しますね」
そして私は自分の事を話し始めた――
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