<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
いざ行かん!ドラゴンの国へ 4
巨大な渦はぐるぐると物凄い速さで回り、徐々に漁船は渦の中心へと引き寄せられていく。
「キャアアアッ!」
私はマストに必死にしがみつく。
「いやだーっ! 死にたくないっ! 他の連中はどうなっても構わないが……俺は……俺だけは助かりたいっ!! 結婚もしないうちに死ぬなんてごめんだーっ!!」
ジャスパーさんは舵につかまりながら、身勝手極まりない台詞をほざいている。おのれ、船長として許せまじ。
「ミ、ミラージュッ!!」
ミラージュにドラゴンの姿に戻ってもらおうと思って呼びかけ、ハッとなった。そうだ、ミラージュは船酔いでダウンしてしまっているのだ。
その時――
激しい波音に紛れ、船体からミシミシと音がなり始めた。ハッとなって船体を見渡すと、何と船の分解が始まっている。このボロ漁船が渦に引き込まれる水圧に負けて崩壊が始まっていたのだ。冗談じゃない! こんな所で海の藻屑になるなんてゴメンだ。だってまだ私達はミラージュの故郷にも行けていないし、お母様を探し出すという旅の最終目的すら果たせていないのだ。
「こ、こんな所で……死んでなるものですかーっ!!」
気力を振り絞って立ち上がると天に祈った。
「時よ、止まれーっ!!」
すると――
ピタッ
私以外の全ての時間が止まった。巨大な渦がピタリと静止している光景は圧巻だった。船は不自然なほど船体を傾けているし、舵にすがりついているジャスパーさんは何とシロ目をむいている。全く情けない男だ。
「だけど……時を止めたはいいけれどもこの先どうすればいいかしら?」
とりあえず床に座り込むと、必死で考えた。壊れかけた漁船は燃料切れで自力で動かすことは出来ない。そして後方には巨大な渦が今にも船を飲み込まんとしている。まさに絶体絶命の状態だった。私は考えた。沢山沢山考えて海を見つめた時……。
「え……? 何かしら?」
この船から距離にして……およそ10mほどだろうか? 海に大きな真っ黒い影が映っている。目を凝らしてよく見ると、それは巨大なくじらだったのだ。どうやらこのくじらも渦に巻き込まれそうになり、必死に逃げようとしているようだった。
「くじら……巨大なくじら……そうよ! くじらだわっ!」
私の脳裏にナイスな考えが浮かんだ。
「そうよ! あのくじらの周囲の時間だけ元に戻して、彼……それとも彼女かしら? とにかくあのくじらにこの漁船を運んで貰うのよ!」
私は全てが止まった世界で1人ブツブツ言うとぱちんと指をならした。そして、私はくじらに念を送り込んだ……。
****
「アー最高だわっ!」
漁船はくじらの背中に乗り、物凄い速さで『アトランタ』の大陸を目指して進んでいる。私は自分の力が他の人達にバレてしまうのを好まない。だからまだ漁船に乗っている人達には眠ってもらうことにした。やがて『アトランタ』の陸地が見えてきた頃、今度はウミガメ達に漁船運びをチェンジしてもらい、漁船は無事に? 『アトランタ』大陸へ到着した。
亀さん達は漁船の人々を船から下ろすのも手伝ってくれた。そして全員を陸地に下ろすと、亀さん達はまた大海原へと去っていく。
「みんなーありがとーっ!」
私は亀さん達に大きな声でお別れを行って手を振り……陸に倒れている皆を起こして回った。
そして話は出だしに戻る事になる――
「キャアアアッ!」
私はマストに必死にしがみつく。
「いやだーっ! 死にたくないっ! 他の連中はどうなっても構わないが……俺は……俺だけは助かりたいっ!! 結婚もしないうちに死ぬなんてごめんだーっ!!」
ジャスパーさんは舵につかまりながら、身勝手極まりない台詞をほざいている。おのれ、船長として許せまじ。
「ミ、ミラージュッ!!」
ミラージュにドラゴンの姿に戻ってもらおうと思って呼びかけ、ハッとなった。そうだ、ミラージュは船酔いでダウンしてしまっているのだ。
その時――
激しい波音に紛れ、船体からミシミシと音がなり始めた。ハッとなって船体を見渡すと、何と船の分解が始まっている。このボロ漁船が渦に引き込まれる水圧に負けて崩壊が始まっていたのだ。冗談じゃない! こんな所で海の藻屑になるなんてゴメンだ。だってまだ私達はミラージュの故郷にも行けていないし、お母様を探し出すという旅の最終目的すら果たせていないのだ。
「こ、こんな所で……死んでなるものですかーっ!!」
気力を振り絞って立ち上がると天に祈った。
「時よ、止まれーっ!!」
すると――
ピタッ
私以外の全ての時間が止まった。巨大な渦がピタリと静止している光景は圧巻だった。船は不自然なほど船体を傾けているし、舵にすがりついているジャスパーさんは何とシロ目をむいている。全く情けない男だ。
「だけど……時を止めたはいいけれどもこの先どうすればいいかしら?」
とりあえず床に座り込むと、必死で考えた。壊れかけた漁船は燃料切れで自力で動かすことは出来ない。そして後方には巨大な渦が今にも船を飲み込まんとしている。まさに絶体絶命の状態だった。私は考えた。沢山沢山考えて海を見つめた時……。
「え……? 何かしら?」
この船から距離にして……およそ10mほどだろうか? 海に大きな真っ黒い影が映っている。目を凝らしてよく見ると、それは巨大なくじらだったのだ。どうやらこのくじらも渦に巻き込まれそうになり、必死に逃げようとしているようだった。
「くじら……巨大なくじら……そうよ! くじらだわっ!」
私の脳裏にナイスな考えが浮かんだ。
「そうよ! あのくじらの周囲の時間だけ元に戻して、彼……それとも彼女かしら? とにかくあのくじらにこの漁船を運んで貰うのよ!」
私は全てが止まった世界で1人ブツブツ言うとぱちんと指をならした。そして、私はくじらに念を送り込んだ……。
****
「アー最高だわっ!」
漁船はくじらの背中に乗り、物凄い速さで『アトランタ』の大陸を目指して進んでいる。私は自分の力が他の人達にバレてしまうのを好まない。だからまだ漁船に乗っている人達には眠ってもらうことにした。やがて『アトランタ』の陸地が見えてきた頃、今度はウミガメ達に漁船運びをチェンジしてもらい、漁船は無事に? 『アトランタ』大陸へ到着した。
亀さん達は漁船の人々を船から下ろすのも手伝ってくれた。そして全員を陸地に下ろすと、亀さん達はまた大海原へと去っていく。
「みんなーありがとーっ!」
私は亀さん達に大きな声でお別れを行って手を振り……陸に倒れている皆を起こして回った。
そして話は出だしに戻る事になる――