<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
ある娼婦の物語 1
私の名前はリーゼロッテ。
けれどここではロッテと名乗るように命じられている。私の名前はどうやら呼びにくいらしく、ビッグマムに名前を変えられてしまったのだ。
深夜2時――
「はーい、毎度ご利用ありがとうございましたー」
「今夜も最高だったよ、ありがとう。ロッテや」
今夜最後のお客様、マルコヴィッチ男爵が着替えを済ませ、私の頭を撫でてきた。
マルコヴィッチ男爵は年齢50代程の男性で奥様との夜の生活が不満らしく、週に3回は通ってきている私の常連客である。
「はい、今夜のチップだよ」
いつものように男爵が私の手に金貨1枚を握らせてきた。
「どうもありがとうございます!」
私はにっこり笑ってお礼を述べた。
「いいかい? くれぐれもこの事は他の人達に内緒だよ?」
男爵はウィンクしながら私に口止めし、「またくるよ」と言って部屋を後にした。
そう、この娼館では娼婦とお客の間での個人的の金銭を貰う事は禁止事項になっているのだ。
私達は完全歩合制で働き、稼ぎの半分はビッグマムに搾取されている。
当然、そのことで他の娼婦仲間たちは不満に思っている。
けれども殆どの娼婦たちは全員訳アリで、何処にも行く場所が無い者たちばかりなので、皆いやいやこの娼館に身を寄せているのだ。
かくいう私もそうなのだけど。
「フフフ……今夜も金貨をくれたわ。マルコヴィッチ男爵は上玉のお客ね。私ってなんて運がいいんでしょう」
早速この金貨をいつもの場所に隠すことにした。
実はこのベッドの下は床板が1枚だけ外れるようになっているのだ。私は早速ベッド下に潜り込んで床板を剥がすと、そこは小さな空洞が空いている。そして空洞の中にはツボが隠されているのだ。
チャリーン
今夜の分の金貨をツボの中に入れて、思わず笑みが浮かぶ。
「フフフ……本当にここの仕事は私に合ってるわ。自分の好きなことをしてお金が貰えるのだから。娼館に置き去りにされたばかりの頃はアレックス王子の事を恨んだけれどもね」
私は自分が娼館にやってきたばかりのことを思い出した――
****
それは突然の出来事だった。
妙に身体が痛くて目を覚ましてみると、なんと私はスケスケ下着姿のまま見覚えの無い部屋の床の上に転がっていたからだ。
「キャアッ! い、一体何なのっ!?」
驚いて起き上がると声が聞こえてきた。
「おや? やっと目が覚めたんだね?」
「え?」
驚いて声の聞こえた方向を振り向くと、紫色のカウチソファに座り、パイプを咥えた中年女性が私をじっと見つめていたのだ。
「え……? あ、貴女は誰なの?」
「私かい? 私はこの娼館『夢の館』のオーナーのアメルダよ。店の娘たちからはビッグマムと呼ばれているわ」
「ビッグマム……」
口の中で小さく呟き、ハッとなった。
「アレックス王子は何処なのっ!? それに娼館て一体どういう事なのよ! 何で私はこんなところにいるのっ!?」
すると、ビッグマムは眉をしかめた。
「全く……キャンキャンとうるさい声で鳴くわねぇ……もう少し小さな声で話せないのかい? まだ夜が明けないんだよ。店の娘たちがようやく眠りにつく時間なんだから、静かにしておくれよ」
窓の外を見ると外はまだ闇に包まれている。
「分かったわ。小さな声で話すから、教えてよ。どうして私はこんなところにいるの? 一緒にいた仲間は何処なの?」
「ああ教えてやろう。さっきも言ったがここは娼館で、あんたは眠っている所を3人の男たちにここに連れてこられたのさ。あんたをここで働かせてくれと言って置いていったんだよ」
「な、なんですってーっ!!」
私が叫んだのは言うまでも無かった――
けれどここではロッテと名乗るように命じられている。私の名前はどうやら呼びにくいらしく、ビッグマムに名前を変えられてしまったのだ。
深夜2時――
「はーい、毎度ご利用ありがとうございましたー」
「今夜も最高だったよ、ありがとう。ロッテや」
今夜最後のお客様、マルコヴィッチ男爵が着替えを済ませ、私の頭を撫でてきた。
マルコヴィッチ男爵は年齢50代程の男性で奥様との夜の生活が不満らしく、週に3回は通ってきている私の常連客である。
「はい、今夜のチップだよ」
いつものように男爵が私の手に金貨1枚を握らせてきた。
「どうもありがとうございます!」
私はにっこり笑ってお礼を述べた。
「いいかい? くれぐれもこの事は他の人達に内緒だよ?」
男爵はウィンクしながら私に口止めし、「またくるよ」と言って部屋を後にした。
そう、この娼館では娼婦とお客の間での個人的の金銭を貰う事は禁止事項になっているのだ。
私達は完全歩合制で働き、稼ぎの半分はビッグマムに搾取されている。
当然、そのことで他の娼婦仲間たちは不満に思っている。
けれども殆どの娼婦たちは全員訳アリで、何処にも行く場所が無い者たちばかりなので、皆いやいやこの娼館に身を寄せているのだ。
かくいう私もそうなのだけど。
「フフフ……今夜も金貨をくれたわ。マルコヴィッチ男爵は上玉のお客ね。私ってなんて運がいいんでしょう」
早速この金貨をいつもの場所に隠すことにした。
実はこのベッドの下は床板が1枚だけ外れるようになっているのだ。私は早速ベッド下に潜り込んで床板を剥がすと、そこは小さな空洞が空いている。そして空洞の中にはツボが隠されているのだ。
チャリーン
今夜の分の金貨をツボの中に入れて、思わず笑みが浮かぶ。
「フフフ……本当にここの仕事は私に合ってるわ。自分の好きなことをしてお金が貰えるのだから。娼館に置き去りにされたばかりの頃はアレックス王子の事を恨んだけれどもね」
私は自分が娼館にやってきたばかりのことを思い出した――
****
それは突然の出来事だった。
妙に身体が痛くて目を覚ましてみると、なんと私はスケスケ下着姿のまま見覚えの無い部屋の床の上に転がっていたからだ。
「キャアッ! い、一体何なのっ!?」
驚いて起き上がると声が聞こえてきた。
「おや? やっと目が覚めたんだね?」
「え?」
驚いて声の聞こえた方向を振り向くと、紫色のカウチソファに座り、パイプを咥えた中年女性が私をじっと見つめていたのだ。
「え……? あ、貴女は誰なの?」
「私かい? 私はこの娼館『夢の館』のオーナーのアメルダよ。店の娘たちからはビッグマムと呼ばれているわ」
「ビッグマム……」
口の中で小さく呟き、ハッとなった。
「アレックス王子は何処なのっ!? それに娼館て一体どういう事なのよ! 何で私はこんなところにいるのっ!?」
すると、ビッグマムは眉をしかめた。
「全く……キャンキャンとうるさい声で鳴くわねぇ……もう少し小さな声で話せないのかい? まだ夜が明けないんだよ。店の娘たちがようやく眠りにつく時間なんだから、静かにしておくれよ」
窓の外を見ると外はまだ闇に包まれている。
「分かったわ。小さな声で話すから、教えてよ。どうして私はこんなところにいるの? 一緒にいた仲間は何処なの?」
「ああ教えてやろう。さっきも言ったがここは娼館で、あんたは眠っている所を3人の男たちにここに連れてこられたのさ。あんたをここで働かせてくれと言って置いていったんだよ」
「な、なんですってーっ!!」
私が叫んだのは言うまでも無かった――