<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

ある娼婦の物語 4

 結局、私は警察官に噛み付いた暴行罪と業務執行妨害とやらの罪で捕縛されてしまった。

両手首を縄で縛られた状態で大部屋の椅子に座らされていた。私の両隣には警察官、正面にはビッグマムが座っている。部屋の出入り口付近では私達が逃げられないようにする為であろうか?2人の警察官が張り付いている。

「……それで? 私をどうするって言うんです?」

ビッグマムはヤケクソのように2人の警察官に尋ねた。

「決まっているだろう? お前は営業許可も出さずに勝手に商売を始めていたのだ。しかも娼館をな! 娼館の営業許可は厳重な審査が必要なことも知らんのか!? あげくにまだ15歳の少女にまで客を取らせていたとは……これは明らかに犯罪なのだぞっ!?」

口ひげを生やした警察官が怒鳴りつけた。

ええっ!?
15歳で働いていた!? ちっとも知らなかった……。それにしても一体誰のことだろう?
まさかアイシャのことだろうか? あの娘は妙に童顔だったし……。

口ひげ警察官の話はまだ続く。

「それだけじゃない。お前は不当に賄賂を受け取っていただろう? おまけに客の身元を勝手に調査して、上玉とみなした客を脅迫していたな? この事を家族にバラされたくなければ、金をよこせと!」

ええっ!?
私達からあれだけお金を搾取しておいてっ!? 私達がチップを受け取ることすら禁止していたのに、お客から金を巻き上げて自分だけ私腹を肥やしていたなんて、信じられないっ! なんて強欲な女なのだろう!

私はビッグマムを睨みつけた。

すると私の視線に気付いたのか、ビッグマムがフンと鼻を鳴らした。

「おや? 何だい? その態度は……言っておくけどね、お前みたいなアバズレ年増なんてね、雇って上げるような店はうちぐらいしか無いんだよ!」

「な、何ですってっ!? 誰がアバズレ年増よ! 私はまだ23歳なのよっ!」

まぁ、半月後には24歳になるけれど。

「こらっ! お前たち! 勝手に口喧嘩を始めるなっ!」

警察官が止めに入る。

「言っておくけどね、23歳なんてこの世界じゃ年増なんだよっ! いちばん人気なのは18歳から22歳までなんだよっ! 全く気の強い女だよ。だから男に捨てられるんだよ!」

「な、なんですって〜っ! よくも私が気にしていることを言ったわね!?」

「やめるんだっ! 我々の話が先だっ!」

更に別の警察官が止めに入る。

その時――

ガチャッ!

扉が大きく開け放たれ、数人の警察官たちが部屋になだれ込んできた。

「やった! 見つけましたよっ!」

「この店の女が隠し持っていた金を見つけ出しました!」

「これが女が持っていた全財産ですっ!」

警察官たちは口々にいい、押収してきたビッグマムの隠し財産を床の上に置いていく。

「あ〜っ!! そ、それは……!」

私は思わず叫んでしまった。

なぜなら押収された財産の中には私が客から貰ったチップを隠していた壺まで押収品として床の上に置かれたからであった――
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