<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
ある娼婦の物語 5 <完>
「ちょ、ちょっとっ! あの壺の中に入っているお金は私のお金よっ! お客様から貰ったチップを全部あの中に隠しておいたんだからっ! 返してよっ!」
慌てて喚くと、ビッグマムが反応する。
「何だってっ!? ロッテ! お客から直接チップを受け取ったら駄目だと言っていただろう!? この娼館のルールを破るんじゃないよっ!」
「何がルールよっ! チップまで横取りする店なんて普通ありえないでしょう!? 今どき、ウェイトレスだって貰ったチップは自分のものにしてるわよっ!」
「うるさいねっ! ここはレストランじゃないよっ! 男の客を取って悦ばす娼館なんだよっ! この店では私はルールなんだ!」
「何がルールよっ! この……強欲ババアがっ!」
「誰が強欲ババアだってっ!?」
警察官を前に激しい口喧嘩をする私達。
「こらっ! 勝手に私語をするなっ!」
「こんな所で喧嘩するんじゃないっ!」
警察官たちは慌てて止めるも私達の口喧嘩はますます加熱していく。
「とにかくあのお金は私のものよっ! 返してよっ!」
「何言ってるんだいっ! 客からのチップも渡すのがこの店のルールだろうっ!?」
私とビッグマムの口論は続き……。
「うるさいっ! お前たちは2人とも逮捕だっ! 喧嘩なら牢屋で好きなだけしろっ!」
とうとう一番偉そうな警察官の一声で、私とビッグマムは逮捕されて町の警察署に連行されてしまった。
一方、他の娼婦たちはその全員が借金の肩にビッグマムの店に連れてこられて無理やり働かされたと言う事で、結局逮捕されたのは私とビッグマムだけだったのである。
****
「全く、冗談じゃないわよっ! どうして私が逮捕されなくちゃならないんだいっ!」
私の向かい側の牢屋に入れられたビッグマムは鉄格子を握りしめながら喚いている。
「ちょっと、牢屋で騒がないでくれる。うるさくてたまらないじゃないっ! 大体不当な商売で利益を上げてきたくせに、逮捕されても当然でしょう! それよりも納得いかないのは私よ! 必死で働いて貯金してきたチップを警察に押収されてしまったんだからっ!」
恐らくビッグマムは私と違って牢屋に入れられるのは初めての経験でパニックを起こしているのかもしれない。
「何が必死に働いて……だよ! 自分から喜んで男の前で股を開いていたくせに! このあばずれ女めっ!」
「何があばずれよっ! 私が好きで働いてたと思ってるのっ!?」
「ああ、思ってるね! お前を私の店に置いて『ラメール』へ向かったアレックスとやらがそう言ってたんだよ!」
「何ですって?」
思わずビッグマムの言葉に反応する。
「ねぇ、もう一回言いなさい! アレックス王子は何て言ってたのよ!?」
私はビッグマムの胸ぐらを掴んだ。
「よ、よしなっ! 苦しいじゃないかっ! あんたは男とみれば誰にでも簡単に股を開くようなアバズレ女だって言ってたんだよ!」
「違うわよ! アレックス王子はどこへ行くって言ってたのよっ!」
この際不名誉な言われ方は飲み込むとしよう。そんな事よりも今はアレックス王子の行方だ。
「だ、だから……外洋をつなぐ玄関口『ラメール』の港町だよ……く、苦しい……」
ラメール……。
そうか、アレックス王子は船に乗るつもりだったのか。それにしてもまさかビッグマムがアレックス王子の行方を知っていたとは思わなかった。
「やっぱり私にはアレックス王子しかいないわ……決めたっ! 釈放されたら王子の後を追いましょうっ!」
思わず口に出して叫んだ時、奇跡が起こった。
突然足音を響かせて2人の警察官が牢屋にやって来たのだ。そして私に向かって声をかけてきた。
「おい、そこのお前……喜べ。釈放だぞ」
「えっ!? 本当にっ! やった!」
思わず嬉しくなって手を叩いた。するとビッグマムが喚く。
「ちょ、ちょっと! 私、私はどうなのよっ!」
「うるさいっ! お前は色々取り調べが残っているから暫くは牢屋の中だっ! さぁ、お前は釈放だ」
警察官はガチャガチャと鍵を開けると、扉を開けた。
キィ~…ガシャンッ!
軋む音と鉄格子の扉がぶつかる音が牢屋に響き渡った――
****
「フフフフ…やったわっ! 私は自由よっ!」
刑務所を出た私は青空を見て叫んだ。
見ていなさい。アレックス王子。
絶対貴方を見つけて……今度こそ二度と逃がさないからね!
白い雲にアレックス王子の面影を浮かべながら心に誓った――
<完>
慌てて喚くと、ビッグマムが反応する。
「何だってっ!? ロッテ! お客から直接チップを受け取ったら駄目だと言っていただろう!? この娼館のルールを破るんじゃないよっ!」
「何がルールよっ! チップまで横取りする店なんて普通ありえないでしょう!? 今どき、ウェイトレスだって貰ったチップは自分のものにしてるわよっ!」
「うるさいねっ! ここはレストランじゃないよっ! 男の客を取って悦ばす娼館なんだよっ! この店では私はルールなんだ!」
「何がルールよっ! この……強欲ババアがっ!」
「誰が強欲ババアだってっ!?」
警察官を前に激しい口喧嘩をする私達。
「こらっ! 勝手に私語をするなっ!」
「こんな所で喧嘩するんじゃないっ!」
警察官たちは慌てて止めるも私達の口喧嘩はますます加熱していく。
「とにかくあのお金は私のものよっ! 返してよっ!」
「何言ってるんだいっ! 客からのチップも渡すのがこの店のルールだろうっ!?」
私とビッグマムの口論は続き……。
「うるさいっ! お前たちは2人とも逮捕だっ! 喧嘩なら牢屋で好きなだけしろっ!」
とうとう一番偉そうな警察官の一声で、私とビッグマムは逮捕されて町の警察署に連行されてしまった。
一方、他の娼婦たちはその全員が借金の肩にビッグマムの店に連れてこられて無理やり働かされたと言う事で、結局逮捕されたのは私とビッグマムだけだったのである。
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「全く、冗談じゃないわよっ! どうして私が逮捕されなくちゃならないんだいっ!」
私の向かい側の牢屋に入れられたビッグマムは鉄格子を握りしめながら喚いている。
「ちょっと、牢屋で騒がないでくれる。うるさくてたまらないじゃないっ! 大体不当な商売で利益を上げてきたくせに、逮捕されても当然でしょう! それよりも納得いかないのは私よ! 必死で働いて貯金してきたチップを警察に押収されてしまったんだからっ!」
恐らくビッグマムは私と違って牢屋に入れられるのは初めての経験でパニックを起こしているのかもしれない。
「何が必死に働いて……だよ! 自分から喜んで男の前で股を開いていたくせに! このあばずれ女めっ!」
「何があばずれよっ! 私が好きで働いてたと思ってるのっ!?」
「ああ、思ってるね! お前を私の店に置いて『ラメール』へ向かったアレックスとやらがそう言ってたんだよ!」
「何ですって?」
思わずビッグマムの言葉に反応する。
「ねぇ、もう一回言いなさい! アレックス王子は何て言ってたのよ!?」
私はビッグマムの胸ぐらを掴んだ。
「よ、よしなっ! 苦しいじゃないかっ! あんたは男とみれば誰にでも簡単に股を開くようなアバズレ女だって言ってたんだよ!」
「違うわよ! アレックス王子はどこへ行くって言ってたのよっ!」
この際不名誉な言われ方は飲み込むとしよう。そんな事よりも今はアレックス王子の行方だ。
「だ、だから……外洋をつなぐ玄関口『ラメール』の港町だよ……く、苦しい……」
ラメール……。
そうか、アレックス王子は船に乗るつもりだったのか。それにしてもまさかビッグマムがアレックス王子の行方を知っていたとは思わなかった。
「やっぱり私にはアレックス王子しかいないわ……決めたっ! 釈放されたら王子の後を追いましょうっ!」
思わず口に出して叫んだ時、奇跡が起こった。
突然足音を響かせて2人の警察官が牢屋にやって来たのだ。そして私に向かって声をかけてきた。
「おい、そこのお前……喜べ。釈放だぞ」
「えっ!? 本当にっ! やった!」
思わず嬉しくなって手を叩いた。するとビッグマムが喚く。
「ちょ、ちょっと! 私、私はどうなのよっ!」
「うるさいっ! お前は色々取り調べが残っているから暫くは牢屋の中だっ! さぁ、お前は釈放だ」
警察官はガチャガチャと鍵を開けると、扉を開けた。
キィ~…ガシャンッ!
軋む音と鉄格子の扉がぶつかる音が牢屋に響き渡った――
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「フフフフ…やったわっ! 私は自由よっ!」
刑務所を出た私は青空を見て叫んだ。
見ていなさい。アレックス王子。
絶対貴方を見つけて……今度こそ二度と逃がさないからね!
白い雲にアレックス王子の面影を浮かべながら心に誓った――
<完>