<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

レベッカ一行の世界漫遊の旅 5 (ついに……再会!? 11 )

「「「え……?」」」

船長室になだれ混むような形で倒れこんだ私たちは目の前の光景を見て絶句してしまった。
そこには男色家船長がうつぶせになってソファに寝そべり、その上にまたがったセネカさんが船長の背中をマッサージしている最中だったのだ。

「な、何だ? お前ら! いきなり部屋の中に倒れこみやがって!」

男色家船長は私たちを見ると驚いた様子で声を張り上げた。

「やあ。お帰り、ミラージュ。そして皆」

「は、はい……お父様。ただいま戻りましたわ」

セネカさんに声をかけられ、床の上に倒れたまま返事をするミラージュ。


「あ、あの……お2人は一体何をされているのですか?」

立ち上がると、恐る恐る私は尋ねてみた。
他のメンバーもいつの間にか立ち上がっている。

「見れば分かるだろう? お疲れの船長に私の得意なマッサージをしてあげていたのだよ」

「え……? マッサージだったのか? そ、そうか……ハハハハ……」

サミュエル王子が何故か疲れきったような乾いた笑い方をする。

「そんな……あのうめき声はマッサージによる快楽のうめき声だったなんて……な、なんって紛らわしい声を出すんですかーっ!!こ、こっちは期待に胸を膨らませていたのにーっ!!」

ついに逆上したナージャさんは船長室に置いてあった花瓶やら本をお構いなしに船長とセネカさんに投げつけ始めた。


「こ、こら! やめなさいっ! 危ないじゃないかっ!」

「うわっ! な、何すんだっ! あの姉ちゃん! 正気じゃないぞっ!!」

必死で逃げ惑うセネカさんと男色家? 船長に向かってナージャさんは物を投げつけるのをやめようとはしない。

「期待持たせるんじゃなーいっ!!」

激しく暴れるナージャさんがおっかなくって、私達は黙って見ていたのは言うまでもない――



****

 それから約1時間後――

ようやく怒りが収まった時には部屋の中の惨状は凄まじい物だった。
ナージャさんは暴れた全責任を負って船長室を綺麗にするように、船長及び、船員から命じられた。
けれどあまりにも部屋の中は壊滅的状態で、とてもではないけれどもナージャさんが1人で片づけるのは不可能な状態だった。
そこで普段から彼女の占いで色々お世話になっている私は、こっそりと力を使って室内を綺麗にしてあげた。
勿論、その事実を知るのは私とミラージュだけなのだった……。


 そして、ついに船は『ハルシオン』へ向けて大海原を出港した。


待っていね。お母様。
今、私が会いに行くから。

甲板に立った私はどこまでも広がる海を見つめながら、心に誓った――
 
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