<外伝>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
ミラージュの物語 4
いつものように2人で母のお墓参りに出掛けていた日の事だった。
「あら、ミラージュ。誰かかがこの結界の近くで道に迷っているみたいだわ」
レイラ様が不意に立ち止まった。
「え? そうなのですか? すみません、あいにく私は何も感じなくて……」
そう、レイラ様はこの「エデンの園」の人間。しかもこの国の正当な王位継承者なので、国王につぎ、力が強い。だからどこにいようが、いち早く世界の異変を感じ取る事が出来るのだ。
「あっちだわ」
レイラ様は花畑の中を駆け出した。
「あ! 待って下さい! レイラ様っ!」
レイラ様は駆けながら結界を解いてしまった。途端に「エデンの園」の世界はかき消え、代わりに外界と繋がる。
「待って下さい! レイラ様っ!」
レイラ様は半分ドラゴンの血を引く私よりも早く駆けていく。私は何だか嫌な予感がしてならなかった。後から考えれば私の嫌な予感はドラゴンの本能的な勘だったのかもしれない。
やっとレイラ様に追いつくと、泉のそばで意識を失って倒れている人間の若い男がいた。レイラ様はその男に水をすくって飲ませてあげている。
「レイラ様……」
私は木の陰からその様子を伺っていた。とてもでは無いが、そこから出ていく事が出来なかった。あの人間に嫌な感情しか湧き上がってこなかったからだ。
レイラ様にはそれが分からないのだろうか……?
「あの人間は危険だわ……。廃除しなければ……」
封印を解いて本来のドラゴンの姿に戻ろうとした時、頭の中でレイラ様の声が響き渡った。
<駄目よ、ミラージュ。人間界でドラゴンの姿に戻っては。もし見つかったら大変な事になるわ。今、結界を張るから貴女は先に「エデンの園」に帰っていて>
<で、ですが…!>
<私の事なら大丈夫。この人の目が覚めたらちゃんと戻るから……!>
<レイラ様、必ずですよ…!?>
すると途端に辺りの空気が変わる。私は「エデンの園」を目指して走り出した……。
「ハアハアハア……」
森の中を走り抜け、視界が開くと気付けばそこは母の墓の前だった。
「お母さん…どうかレイラ様に何事もおこりませんように……」
私は母に祈りを捧げたが……その祈りは届く事は無かった。
レイラ様は半日戻る事は無かった――
****
私とレイラ様は2人だけで神殿に住んでいた。神殿はとても広く、余計なものは一切無い。あるのは私とレイラ様が寝る為のベッドだけ。
お腹がすけば神殿の外に鈴なりになっている果実を食べた。神殿の裏には温泉が湧いているので、いつでも温泉に入ることが出来た。雨が降ることも無く、1年を通して温暖なこの世界は余分なものは一切無かった。
そして私は何も無い、誰もいない神殿で星が見えるまでレイラ様を待ち続けた。疲れ切ってウトウトし始めた時……初めてレイラ様は戻って来たのだ。
「ミラージュ。こんなところで寝ては駄目よ。ベッドで寝ましょう」
「あ……レイラ様……やっと戻て来てくれたんですねっ!?」
私は涙を浮かべてレイラ様にしがみついた。
「ごめんなさいね、ミラージュ。どうしても彼が私を離してくれなくて……」
レイラ様は困ったような……でも、頬を赤らめているようにも見えた。
彼……? 彼ってあの人間の事ですか? まさかレイラ様はあの人間に恋してしまったのですか?
私の嫌な予感は当たってしまった。レイラ様はそれから5日間連続で半日以上姿をくらますようになり……6日目の日に私に言った。
「聞いて、ミラージュ。私、人間界のオーランド王国に嫁ぐ事にしたの。貴女はどうする? 出来れば私は貴女についてきてもらいたいわ」
ああ、何て事だろう……。
私の嫌な予感は的中してしまったのだ――
「あら、ミラージュ。誰かかがこの結界の近くで道に迷っているみたいだわ」
レイラ様が不意に立ち止まった。
「え? そうなのですか? すみません、あいにく私は何も感じなくて……」
そう、レイラ様はこの「エデンの園」の人間。しかもこの国の正当な王位継承者なので、国王につぎ、力が強い。だからどこにいようが、いち早く世界の異変を感じ取る事が出来るのだ。
「あっちだわ」
レイラ様は花畑の中を駆け出した。
「あ! 待って下さい! レイラ様っ!」
レイラ様は駆けながら結界を解いてしまった。途端に「エデンの園」の世界はかき消え、代わりに外界と繋がる。
「待って下さい! レイラ様っ!」
レイラ様は半分ドラゴンの血を引く私よりも早く駆けていく。私は何だか嫌な予感がしてならなかった。後から考えれば私の嫌な予感はドラゴンの本能的な勘だったのかもしれない。
やっとレイラ様に追いつくと、泉のそばで意識を失って倒れている人間の若い男がいた。レイラ様はその男に水をすくって飲ませてあげている。
「レイラ様……」
私は木の陰からその様子を伺っていた。とてもでは無いが、そこから出ていく事が出来なかった。あの人間に嫌な感情しか湧き上がってこなかったからだ。
レイラ様にはそれが分からないのだろうか……?
「あの人間は危険だわ……。廃除しなければ……」
封印を解いて本来のドラゴンの姿に戻ろうとした時、頭の中でレイラ様の声が響き渡った。
<駄目よ、ミラージュ。人間界でドラゴンの姿に戻っては。もし見つかったら大変な事になるわ。今、結界を張るから貴女は先に「エデンの園」に帰っていて>
<で、ですが…!>
<私の事なら大丈夫。この人の目が覚めたらちゃんと戻るから……!>
<レイラ様、必ずですよ…!?>
すると途端に辺りの空気が変わる。私は「エデンの園」を目指して走り出した……。
「ハアハアハア……」
森の中を走り抜け、視界が開くと気付けばそこは母の墓の前だった。
「お母さん…どうかレイラ様に何事もおこりませんように……」
私は母に祈りを捧げたが……その祈りは届く事は無かった。
レイラ様は半日戻る事は無かった――
****
私とレイラ様は2人だけで神殿に住んでいた。神殿はとても広く、余計なものは一切無い。あるのは私とレイラ様が寝る為のベッドだけ。
お腹がすけば神殿の外に鈴なりになっている果実を食べた。神殿の裏には温泉が湧いているので、いつでも温泉に入ることが出来た。雨が降ることも無く、1年を通して温暖なこの世界は余分なものは一切無かった。
そして私は何も無い、誰もいない神殿で星が見えるまでレイラ様を待ち続けた。疲れ切ってウトウトし始めた時……初めてレイラ様は戻って来たのだ。
「ミラージュ。こんなところで寝ては駄目よ。ベッドで寝ましょう」
「あ……レイラ様……やっと戻て来てくれたんですねっ!?」
私は涙を浮かべてレイラ様にしがみついた。
「ごめんなさいね、ミラージュ。どうしても彼が私を離してくれなくて……」
レイラ様は困ったような……でも、頬を赤らめているようにも見えた。
彼……? 彼ってあの人間の事ですか? まさかレイラ様はあの人間に恋してしまったのですか?
私の嫌な予感は当たってしまった。レイラ様はそれから5日間連続で半日以上姿をくらますようになり……6日目の日に私に言った。
「聞いて、ミラージュ。私、人間界のオーランド王国に嫁ぐ事にしたの。貴女はどうする? 出来れば私は貴女についてきてもらいたいわ」
ああ、何て事だろう……。
私の嫌な予感は的中してしまったのだ――