魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「実は、社内報を見て妃さんのことは知っていました。パイロットだなんてすごいです」

 空港で偶然会ったのが最初だけれど、きっと私しか覚えていないのであえて言わないでおこう。

 妃さんは気恥ずかしそうに首に手を当て、目を逸らして苦笑する。その姿もイケメンで、思わずファンになってしまいそうなほど。

「あー、社内報見られていたんですね……穴掘って入りたい」
「インタビュー、とっても素敵でしたよ。パイロットは誰でもできる仕事ではないですし、めちゃくちゃカッコいいです」
「そうですか? そんなに褒めたら、旦那様が私に嫉妬しちゃいますよ」

 さらりと落ちた前髪を片手で掻き上げ、いたずらっぽく笑って上目遣いでこちらを見る彼女にも、胸を射抜かれそうになった。カッコよさと可愛さが混在している……尊い。

 女性にドキドキするなんて初めてで悶えたくなっている私をよそに、妃さんはなにか言いたげな様子を見せる。

「あの……羽澄キャプテン、家ではどうですか?」

 やや遠慮がちに口にされた問いかけで、私は一瞬で現実に引き戻された。

 なぜ彼女が、誠一さんの家での様子を気にかけるのだろう。というか、質問がざっくりとしすぎていてどう答えればいいものか。

< 100 / 212 >

この作品をシェア

pagetop