魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい

 いよいよ迎えた、誠一さんのラストフライト当日。十月に入ってぐっと気温が下がってきて、天気に恵まれた今日も秋晴れの澄んだ空が広がっている。

 その中を悠々と飛ぶ飛行機は、先ほど北海道の新千歳空港を発ったばかり。津軽海峡の周辺を眺め、こうやって見ると下北半島から北海道が近く感じるなとぼんやり思いながら、これから羽田空港へと向かう。

 誠一さんは昨日から福岡にステイしていて、午前中に羽田へと戻ってきた。そこから新千歳へ向かう便に私も乗り、今はその折り返しで再び羽田に帰るところ。

 新千歳へ向かう便には、お義母様も一緒に乗った。やっぱり誠一さんにはご両親も乗せてあげたい気持ちも多少あるようだったので、声をかけたらお義母様だけ来ることになったのだ。

 彼女はせっかくだから北海道で観光してから帰ると言い、一泊していくのだそう。『芽衣子さんもどう? 嫁いびりなんかしないから安心して』と誘われたものの、誠一さんに最後までついていきたかったので丁重にお断りした。もちろん、嫁いびりされると思っているわけではない。

 北海道にいられたのはインターバルの二時間ほどで、初めて北の大地に降り立ったけれど、お義母様と軽くショッピングをしただけで、空港内からは出ずに過ごした。

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