魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 そうして今に至る。ひとりで夕焼けに染まる東北の美しい景色を眺めながら思い出しているのは、昨夜誠一さんとした電話での会話。

 いつものように寝る前に電話をかけてきてくれた彼は、しばしたわいない話をした後にこう言った。

《そういえば、妃と話したんだって? いつの間にか知り合いになっていたから驚いた》

 妃さんの名前が出てぎくりとした。なんとなく彼女のことを話題にするのは避けていたのだが、ここはしらを切っておく。

『 すみません、言ってなかったですね。実はそうなんですよ。妃さんから聞いたんですか』
《ああ。今回のフライトは彼女とペアになってね》

 初めて聞く事実は私にとっては少しショックで、『そう、だったんですね……』と違和感のある返事をしてしまった。

 ラストフライトは、私と誠一さんだけの思い出にできると思っていたから。ペアになったのはただの偶然なのだろうし、気にするのはおかしいのかもしれないけれど、どうしても拒否反応みたいなものが出てしまう。

 この感情の正体がなんなのかはもうわかっていた。彼の目に、心に映るのは私だけでありたいという、独占欲や嫉妬の塊だと。

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