魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 若干ヘコみつつも、買ってしまったものは仕方ないと開き直る。そんな私に妃さんが会釈し、クールな笑みを残して颯爽と通り過ぎていく。おそらく気を遣ってくれたのだろう。

 勝手に嫉妬してごめんなさいと、なんとなく心の中で謝り、私を見つめる誠一さんに笑顔で向き直る。

「誠一さん、お疲れ様でした! 素敵なフライトをありがとうございました。アナウンスもすっごく嬉しかったです」

 どんどん近づいてくる彼にえへへと苦笑して、落ち着いたオレンジとボルドーで統一した秋らしい色合いの花束を掲げてみせる。

「すみません、私も用意しちゃいました。お花いっぱいで家が華やかに──」

 茶化していたら、突然伸びてきた手に背中を抱き寄せられ、花束ごと彼の胸に飛び込んでしまった。驚きで息が止まりそうになる。

「ありがとう。花もいいけど、芽衣子に会えるのが一番嬉しい」

 私にとって最高のひと言がもらえて、胸の奥から熱いものがこみ上げる。

 それなのに、同時に苦しくもなる。私は妃さんのように輝くなにかを持っているわけでもなく、気の利いたプレゼントを用意することもできない人間なのにこんなに甘やかされていいのかと、やっぱりためらってしまうし自信がない。まさに感情のジェットコースターだ。

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