魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 外も暗くなって車内が見えにくいとはいえ、運転手もそばにいる状況でキスしてしまった……! 慌てて身体を離すも、誠一さんはいたずらっぽく笑って私の顎をくいっと持ち上げる。

「こんな色っぽい顔してたら気づかれるぞ。なにかいやらしいことしてたなって」

 吐息交じりに囁かれ、恥ずかしすぎて火照った頬がさらに熱くなる。

 そう言うあなたのほうが色気だだ漏れなんですよ、と物申したい。そして、余裕がかいま見えるのでちょっと悔しい。

「っ……誠一さんのせいです」
「悪い、ふたりになったら我慢できなくて。……キスだけでやめてあげられそうにない」

 太ももに触れた手が腰へと滑らされ、一気に緊張が高まる。

 急展開すぎて、キスをしただけでもいっぱいいっぱいだ。自分の身体に自信なんてないし、もっと慎重に愛を深めてからのほうがいいんじゃないかと踏みとどまってしまう。

 でも、その先へ進みたい気持ちも大きい。心だけじゃなく身体も結ばれて、名実共に彼の妻になりたい。焦る必要はないのだろうけど、私は今、彼を欲している。

 そんな迷いが顔に表れていたのか、誠一さんは情欲を奥にしまい込んだように苦笑する。

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