魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「冗談だよ。芽衣子が嫌なのに無理にしないから」
「嫌じゃないです!」

 咄嗟にそう言い切ると、彼は驚いて目を丸くした。私は声を潜めて続ける。

「私、誠一さんを好きになってから、どんどん欲張りになってて。愛されてるって、もっと感じたいんです」

 自分からこんなことを言うなんて、ちょっと前の私からは想像もできなかった。ものすごく恥ずかしいけれど、求める気持ちを抑えられない。

 彼はとても嬉しそうに頬を緩め、私を抱き寄せた。

 家に着いて足早に玄関の中に入ると、手を引かれて一直線に寝室へ向かう。階段を上がるたび心拍数も上がっていく私に、彼はどこか満足げに言う。

「人のために生きてきたような君が、自分の望みを言うようになったのはすごい進歩だな」
「誠一さんが教えてくれたからです。もっと自分の気持ちに正直になっていいって」

 バンクーバーで励ましてくれた言葉が、私を変えるきっかけになった。運命というものは本当に不思議だ。

 寝室に入り一緒にベッドに座ると、誠一さんは私のおでこや耳にキスをしながら服を脱がせていく。上半身が下着とキャミソールだけの無防備な状態になり、無意識に身を縮める私に穏やかな声で言う。

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