魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「まだ契約は解消していなかったな。一年なんて期限つきじゃない、普通の夫婦になろう」

 腕枕をする彼に頬をそっと撫でながら言われ、私はキョトンとした。

 そういえば、契約婚の解消はしていなかったっけ。心も身体も結ばれて普通の夫婦になったとすっかり思い込んでいたけれど、一応一年契約はまだ続いているのよね。

 もちろんその契約は破棄したい。ただ、意地悪された仕返しをしてやりたいという気持ちがむくむくと湧いてくる。いつも翻弄されるのは私だから、ちょっぴり彼を悔しがらせてみたい。

「契約が終わる日にお返事します。それまでどうなるか保証はできません」
「え」
「散々意地悪されたから仕返しです。私も焦らしてあげますよ」

 したり顔でそう返すと、綺麗な顔がとても不満げにむすっとなるので笑ってしまった。

 契約の最終日もその後も、気持ちが変わることはありえない。私たちはいつまでも夫婦だから安心してねと、心の中で呟いた。


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