魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 ずっとざわざわしていた心が落ち着いていくのを感じながら、ひとつの疑問を投げかける。

「でも、誠一さんはどうして知っているんですか? 記者の人、私が特定されるような記載はしないって言っていたのに」
「書かれていたのは、君が会った記者の雑誌じゃなくネット記事なんだ」

 誠一さんは自分のスマホを取り出して、大物議員と益子の関係についての記事を見せてくる。そこには益子に隠し子がいたことに加え、〝娘は父の不正を隠すため、日本アビエーションの新社長の妻になったのではないか〟とまで書かれていた。

 どれも憶測の書き方をされているが、事実も交えているから怖い。私のことまで調べている人が清水さん以外にもいて、どこかから情報が漏れていると思うとぞっとする。

 誠一さんも心底不快そうに顔をしかめている。

「裏づけ取材をせずに憶測で書く、いわゆる飛ばし記事ってやつだろう。信憑性に欠けていても、信じてしまう人がいるから厄介だ」
「なんでこんな、誰も得しないような記事を……」
「不祥事を起こした人物の隠し子が、その会社の社長と結婚したとなったら、面白いネタになると思ったんじゃないか」

 確かに、誠一さんはすでにメディアに出ている大企業の次期社長だ。私は一般人でも彼の妻としては話題になるかもしれないし、それが犯罪者の隠し子となればなおさらだろう。

< 128 / 212 >

この作品をシェア

pagetop