魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 梨衣子の言う通り、私の左目の下には小さなほくろがある。目や唇の形も違うのだが、これが一番わかりやすいので周りの人にはいつもこう教えているのだ。

 羽澄さんはふいに前のめりになり、私のほくろを確認してくる。

 ……少し色素が薄くて、涙袋がある色っぽくて綺麗な目。こうやって男性に間近でじっと見つめられるのには慣れていなくて、つい目が泳いでしまう。

「ああ、本当だ。しっかり覚えましたよ、芽衣子さん」

 やや上目遣いでふっと笑みをこぼす彼に、否応なくドキッとしてしまった。なにも特別なことは言っていないのに、この人からはなぜ色気を感じるのだろう。

 頬に熱が集まるのを感じつつ、とりあえず微笑んでおく。私たちのそばでは、ディランさんたちが相変わらず甘い雰囲気を漂わせている。

「もし梨衣子と芽衣子サンが双子だったとしても、僕は絶対間違えないから安心シテ」
「本当に? 酔ってても?」
「Of course!」

 仲よく話しているふたりを見ていると安心する。同時にとても切なくなるけれど、それをひた隠しにして梨衣子に声をかける。

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