魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「ただね、横領の不祥事で株価も下落してしまって、経営を立て直すのはさらに困難になる。社員からの不満は出るだろうし、益子のせいだと言われてもおかしくない。そこから芽衣子さんに八つ当たりするのは間違っているけど、矛先が向いてしまうのかもしれないわ」

 難しい顔をしてそう語られ、私は視線を落とす。

 大きな不祥事は株価にも影響を与えてしまうんだ。誠実に働いている社員からしたらたまったものじゃないだろう。そんな元凶の人物の娘が社長の妻になっているだなんて、文句を言いたくなるのもわかる。

「あなたが非難されるということは、誠一への風当たりが強くなるのと一緒なの。社長を交代してこれからっていう大事な時期に、もう問題は起きてほしくないわね……」

 お義母様の心配そうな声に、胸が苦しくなる。彼女の言う通り、このままでは誠一さんの負担が大きくなってしまうだけだ。私はいったいどうしたら……。

 彼のためにどうするのが最善なのか、答えを探すのに必死でケーキの味もよくわからなくなっていた。


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