魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 パーティーで会った時、ざっくばらんに話す気さくな性格だが、少々空気の読めない部分もあるなと感じた人だ。

 慌ててスマホをしまい、姿勢を正してお辞儀をする。

「もちろんです! 山中部長、ご無沙汰しております」
「どうも。誠一くんを待ってるのかい?」
「はい。ちょうど近くに来たので、時間が合えば」
「そうか。会議が長引いてそうだったから、もうちょっとかかりそうだよ」

 快く教えてくれた彼は、眼鏡の下の目を三日月のように細めている。

「仲よし夫婦でいいね。でも……申し訳ないけど、ここへはあんまり来ないでもらえるかな」

 温和に接してくれるかと思いきや、目が笑っていないと気づいてギクリとした。

「えっ……」
「君を見ると無性に腹が立ってくるんだよ 。誠一くんと益子が頭をよぎって」

 あきらかに敵対心を含んだ声で言われ、私は息を呑んだ。山中さんは口元にだけ笑みを浮かべたまま話し続ける。

「誠一くんは、前社長とは違って容赦なくて。私たち役職者の給料が大幅カットされて大変なんだ。『給与体系を見直して、その人の働きや能力に見合った給料を与える』なんて言ってるけど、ただ自分にとって邪魔な古い人間を排除したいだけなんだろう。本当に勘弁してほしいよ」

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