魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
『あなたが非難されるということは、誠一への風当たりが強くなるのと一緒』

 お義母様の言葉とリンクして、ぐっと心臓が掴まれたように苦しくなる。山中さんだけでなく、誠一さんに不満や疑惑を持つ人は少なくないのだろう。私が妻になったせいで……。

 反論できず、どうしようもない悔しさや無力感で俯いた、その時。

「なにやってるんですか」

 山中さんの後方から聞き覚えのある声がして、私はぱっと顔を上げた。同時に振り向いた山中さんも、そこにいた人物を見てギョッとしている。

「き、妃さん……!」

 裏返りそうな声を出す彼を、冷ややかな目で見ているのは妃さんだった。今日はストライプシャツにテーパードパンツを合わせた、オフィスカジュアルなスタイルだ。

 まさか彼女がここにいるとは思わず、私も呆気に取られる。

「部長が一方的に迫ってるように見えましたけど、まさかセクハラじゃないですよね? それともモラハラ?」
「っ、そんなわけないじゃないか! わ、私はただ、誠一くんの奥さんに挨拶していただけだ。変な言いがかりはやめてくれ!」
「そうですか。それは失礼しました」

 あからさまにうろたえる山中さんに、妃さんはあっさり謝った。その温度差のせいで、余計に彼が必死で言い訳しているように見える。

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