魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 妃さんは今なにがあったのかを聞いて、寄り添ってくれる。とてもありがたいけれど、落ちまくった気分はなかなか浮上しない。

「あまりここへ来ないほうがいいってところだけは正しいかもしれません。正直に言うと、不満を持っているのはあの部長だけじゃないんです。あなたに恨みをぶつけてくる人がいないとは限りませんから、気をつけてください」

 硬い表情で忠告され、さっきの恐怖が舞い戻ってくる。

 山中さんに明らかな敵意を向けられて、私がどれだけ疎ましく思われているのかを実感した。やっぱり不用意に外で誠一さんに近づくのはやめたほうがいいのだろうか。

「まあ、そんなことになる前に羽澄キャプテン……いや、羽澄社長が対処するはずですけどね。芽衣子さんの噂を鵜呑みにするような人たちにも、毅然とした態度で接しているようなので。あなたを精一杯守っているんですよ」

 微笑みかける妃さんは、私を励ましてくれようとしているのだとわかる。でも、守られているのは本来なら嬉しいはずなのに、心は苦しくなるばかり。

 私をかばう分、誠一さんの負担になっているのと同じだから。経営を立て直すという大きな問題に全力投球しなければいけないのに、余計なことに労力をかけさせたくない。

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