魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「……私がいると、誠一さんが大変になるばかりですね。彼を支えてあげたいのに、これじゃ逆効果ですよ」

 目線を落として覇気のない声で言い、自嘲気味の笑みをこぼした。妃さんがはっとした様子でなにかを言いたそうにするも、私は空元気な声でそれを遮る。

「やっぱり先に帰ります。助けてくれてありがとうございました」
「芽衣子さん……!」

 なんとか笑顔を作って頭を下げ、呼び止める彼女を振り切って歩き出す。誠一さんには連絡せず、このまま帰ることにした。

 帰り道をとぼとぼ歩きながら、ひたすら考えを巡らせる。

 ここ数日、ひとつの選択肢が頭の中に浮かんでは無理やり消していた。それが今は、真っ白なシャツについた染みみたいに、もう落とすことはできないほど色濃くなっている。

 ふと目線を上げると、闇が迫ってきた空に一番星がきらめいていた。そういえば昔、母と梨衣子と三人で流星群を見に行ったなと思い出す。

 流れ星は、天国からこぼれ落ちた光のかけらなんだと、その時に聞いたのを覚えている。神様が地上の様子を確認するために時々天国のドームを開けるから、その間は神様に声が届くのだと。あの時、私はなにを願ったっけ。

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