魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 もしも今流れ星が見られたら、願うことはたったひとつ。

「ずっと、誠一さんのそばにいたい……」

 本音がぽつりと口からこぼれ、一気に涙が込み上げた。これは叶えてはいけない願いだ。私がそばにいたら、誠一さんの迷惑になるだけなのだから。

 自分のせいで彼が苦しむことになるのは嫌だ。お互いにとって一番いい選択は、きっと──。


 家に着く頃には、涙は乾いて覚悟も決めていた。決心すると驚くほど冷静になって家事をこなせて、誠一さんが帰ってきた今も、笑顔を取り繕って迎えられている。

「誠一さん、おかえりなさい」
「ただいま。遅くなって悪かったな。今日はゆっくりできたか?」
「はい。お昼寝してから散歩して、っていう犬みたいな過ごし方をしてました」

 明るく答えて料理の仕上げに取りかかろうとした時、スーツの上着を脱いだ彼が私の背後に立つ。

「芽衣子、俺は伊達に君の夫をやっているわけじゃない」
「え?」

 どういう意味だろうかと首をかしげて振り返ると、私を囲うように調理台に両手を突かれ、身動きが取れなくなった。誠一さんは私の心を見透かそうとするような目をしている。

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