魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「俺はなにを言われようと構わないが、芽衣子が根も葉もない噂を立てられているのはもちろん嫌だし、然るべき対応をしている。それは当然のことで、苦労なんてまったく感じちゃいない。仕事に大きな支障も出させない。君は、俺がそれだけで音を上げるような男だと思っているのか?」

 つい語気を強めてしまうと、芽衣子はぶんぶんと首を横に振った。いら立ちにも似た感情が湧いてくるが、冷静になれと自分に言い聞かせる。

「心配はいらない。会社も君も、守ってみせるから──」
「私は守られたいわけではないし、誠一さんでは無理だと思います。……あなたと一緒にいると、つらくなるだけだから」

 泣きそうに震えているが力強くもある声に遮られ、俺は口をつぐんだ。顔を背けたままの彼女を、胸を抉られたような痛みを感じながら呆然と見つめる。

「誠一さんが私のことで余計な時間を取られるのを、そばで黙って見ていることしかできないのはつらいんです。あなたが私を守ろうとするほど、自分の無力さを感じて苦しくなる。一緒にいても、きっと幸せにはなれません。お互いに」

 芽衣子は苦しげな表情で、わざとらしいほどはっきりと告げた。守ることも、一緒にいることさえも拒否され、胸の痛みは激しくなるばかりだ。

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