魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 なんとか口角を上げようとした時、写真を撮る準備ができたらしくカメラマンの男性から声がかかった。私から手を離して愛する人のもとへ向かう妹を、私はただ見ているしかない。

 ぼうっとしていると、背中にそっと手を当てられてはっとする。振り仰ぐと、羽澄さんが穏やかな表情で私を見下ろしていた。

「芽衣子さん、俺たちも行こう」
「あ……はいっ」

 促されてようやく足を踏み出せた。移動するほんのわずかな間に涙腺を引きしめる。

 よく手入れされた芝生を彩る花と木々をバックに、新郎新婦を挟んで参列者が並ぶ。隣にいる梨衣子が明るく笑っているおかげで、私も自然に口元がほころび、ちゃんと笑顔の写真を残せた。

 写真撮影の後は、この公園のパビリオンとなっているレストランで食事会をする。そちらへ向かおうとした時、ディランさんのご両親と話す羽澄さんの姿が目に入った。

 とても流暢に会話していてカッコいいな、と見惚れていると、話を終えた彼はなぜか踵を返してここを去ろうとする。その瞬間にたまたま目が合ったので、私も話しかけてみる。

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