魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 女性社員からクールでドSだと評されている天澤は、確かに人当たりもドライだ。年上のパイロットから生意気だと言われる時もあるようだが、操縦技術はウチの副操縦士の中では一番だと思うし、臆さずものを言うこいつを俺はわりと気に入っている。

 パイロット時代から時々飲みに行く仲なのだが、最近はやはり多忙で会えていなかった。そんな俺が突然声をかけたので、彼も不思議に感じたらしく「で、俺を誘うなんてどうしたんですか?」と問いかける。

 特別な用事があったわけではないが、気心知れた友人になんとなく会いたくなったのは、これからのことに少し気分が落ち着かなくなっているせいだろう。

「……ちょっと緊張してるんだな、俺」
「緊張?」
「ようやく迎えに行けそうなんだ、芽衣子を。業績は上がってきたし、横領の一件も解決してるからもう変な噂が流れるような要因もない。彼女が安心して暮らせる環境を整えられた」

 そう、近いうちに芽衣子に会いに行くつもりでいるのだ。今度こそ逃がしはしないと、強い意志と自信を持って。

 俺の事情は、社内で詳しく話しているのは天澤だけ。まさか恋愛話だとは思わなかったのか、彼はわずかに目を見開いた。

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