魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「でも、たった二年で心変わりされるような愛し方はしていない。俺と離れたことを後悔していてほしいくらいだ」

 他の男では満足できなくなるほどに、心にも身体にも俺にあるすべての愛を注ぎ込んだつもりだ。芽衣子も同じように、一生懸命愛を返してくれていたと感じる。それが今も変わっていないと信じたい。

 俺のあられもない発言に、天澤は珍しく目をしばたたかせた後、〝まいった〟とでも言いたげにふっと笑みをこぼした。

「羽澄さんが実は腹黒くて、こんなに執着心が強い人だったとは。本当は離婚してるのに、周りにはなにも言わず夫婦円満を装ってるくらいですもんね。いまだに結婚指輪もつけたままで」

 ちらりと一瞥された俺の左手には、芽衣子とのペアリングが輝いている。

 彼の言う通り、あえて離婚を公表していないので、事実を知っているのはこの天澤と信頼できる側近数人だけ。他の社員は、今も芽衣子と仲よくやっていると思っているだろう。

 そう思わせておくのが目的で、こうして指輪もつけ続けているのだ。

「夫を演じているだけで抑止力になるからな。俺の妻になにかしたらタダじゃ済まさない、と印象づけておけば彼女を守っていられる。いつ戻ってきても大丈夫なように」
「二年前、噂に踊らされてたやつらも徹底的に脅してましたもんね」


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