魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 しかし自分に大切な人ができると、それが仕事にもいい影響を与えると実感したので、彼にもそういう存在ができたらなと願ってしまう。

「相変わらずいい人はいないのか? 一緒にいて気がラクな子とか、誰かいるだろ」
「いや、特に意識したことがないんで」

 やっぱりドライだな、と苦笑したのもつかの間、彼はなにか思い浮かんだように視線を宙にさ迷わせる。

「あー……ひとりいるか、運航管理に。話してて楽しいのはその子くらいですかね」

 天澤が特定の女性について話すのは珍しく、ついに気になる子が現れたかとピンと来た。本人はまだ自覚がないようだが。

 CAやグランドスタッフではなく運航管理の子か。これはもしかしたら進展があるかもしれないなと、勝手に期待してほくそ笑む。

「俗に言う〝おもしれー女〟ってやつか」
「なんですか、それ」

 眉をひそめる彼にクスッと笑い、俺もグラスを口に運ぶ。気持ちが落ち着いてきたのを感じていると、天澤はふわりと微笑みかけてくる。

「とにかく、羽澄さんの恋がうまくいくように願ってますよ。よき先輩には幸せになってほしいですから」

 彼の根っこにある優しさが伝わってきて、心がほっこりするのを感じながら「ありがとう」と笑みを返した。


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