魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 一歳四ヶ月の今、保育園は一番入りづらい時期らしいので、もうしばらく自分で見ているつもりだ。輝さんが面倒を見つつ働けるように考えてくれたおかげで、本当に充実した日々を過ごしている。

 賑わいがピークを越した午後一時半、お好み焼きを食べ終えた家族連れが、テーブルを片づける私にも声をかけて帰っていく。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「ありがとうございます! お気をつけて」

 仲よく帰っていく彼らに、とても気持ちよく挨拶を返した。しかし同時に、彼が恋しくなって羨望の眼差しを向けてしまう。

 ──約二年前の夫婦最後の日、誠一さんと話したら絶対泣いてしまいそうだったから、彼が眠っている隙に家を出た。

 なのに、まさか追いかけてくるなんて。彼の必死な姿と、伝えてくれた言葉に心が動かされそうになったけれど、バスが発車して物理的に離れたら気持ちは戻っていった。

 それからお義母様たちに電話で離婚することを伝えた。『芽衣子さんが別れても事態は変わらないわよ』と厳しい口調で言われたけれど、優しさで引き止めてくれたのだと思っている。

 それでも私の気持ちは変わらず、最終的に『好きにしてちょうだい』と怒らせてしまった。よくしてくれたのに、恩を仇で返すようなことをして本当に申し訳ない。

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