魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 1DKの部屋は恵茉とふたりで暮らすには十分な広さで、不都合があるとすれば気密性が少し低く冬が寒いことくらいだろうか。誠一さんの豪邸とは雲泥の差だけれど、私にあの家は贅沢すぎた。

 夜泣きしていた時期は住人の迷惑にならないか心配だったものの、苦情が来ることもなく平和に暮らしている。離乳した今は夜も起きなくなってきたし、私の言っていることをだんだん理解してきたようでコミュニケーションがスムーズになってきた。

 夕飯を食べ終えた今は、木で作られたおままごとのセットでひとり遊んでいる。

「恵茉、そろそろお風呂入るよ」
「うー、う!」

 一生懸命、唸りながら包丁で人参のおもちゃを切っている恵茉を微笑ましく眺めつつ、着替えの準備をする。お風呂に入る前にスマホをチェックすると、輝さんからメッセージが来ていた。

【明日は人足りてるから休みでいいぞ! 家族水入らずでどうぞごゆっくり】
「えっ、なんで急に?」

 さっきまでなにも言っていなかったのに、急きょ休みにされるとは何事だろう。しかも、私と恵茉だけなのに〝家族水入らずで〟って、なんだか違和感がある。

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