魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 首をかしげて返事を打とうとした時、インターホンが鳴った。

 恵茉に「ちょっと待っててね」と声をかけてモニターのもとへ行く。このドアホンも前のアパートにはなかったもので、防犯のために絶対これがついている物件にしたほうがいいと、いろんな人から忠告された。

 時刻は午後七時になるところ。荷物も頼んでいないし勧誘かなにかかなと、軽く考えながらモニターを覗いた私は、目を見開いて固まった。

 う、嘘……なんであなたがここに?

 映像が鮮明ではないから今度は見間違いかもしれないと、何度も瞬きして凝視する。しかし間違いない。そこに立っているのは、先ほども見た愛しい人──誠一さんだ。

 息が苦しくなるほど動悸がし始める。どうしようと一瞬戸惑うも、無視することはできず震える指でボタンを押す。

「……誠一、さん?」
《芽衣子》

 モニター越しにこちらを見る彼に、約二年ぶりに名前を呼ばれて激しく動揺する。

「え……な、なんで!?」
《こんな時間に急に来て、驚かせてすまない。場所は梨衣子さんから聞いた》

 梨衣子ってば、絶対に教えないでって言ったのに!

 ……と頭を抱えたくなるけれど、そりゃあ無理だよねとすぐに諦めた。私が本当は誠一さんに会いたいと願っていることは、簡単に見抜かれていたはずだから。

< 195 / 212 >

この作品をシェア

pagetop