魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
 それでも、好きな人を手に入れたい気持ちを完全には抑えきれなかったんだな。それは仕方のないことだし、彼女を責める気にはならない。彼女が嘘をつこうがつくまいが、私は自分から誠一さんと連絡を取る気はなかったのだし。

 ただ、恵茉のことを伝えるべきかどうかはかなり悩んだ。

「妊娠しているってわかった時、連絡しようかすごく迷ったんです。恵茉は私だけの子じゃないから。でも、誠一さんが仕事に集中できるように離婚を選んだのに、連絡したら意味ないなと思って。……なにも知らせなくて、すみませんでした」

 生まれたばかりのわが子と過ごす時間を、私が誠一さんから奪ってしまった。あんなに幸せそうに接する彼を見た今は、それはとても愚かなことだったと罪悪感でいっぱいになっている。

 それなのに彼は責めもせず、俯く私の頭を引き寄せて申し訳なさそうに言う。

「俺のほうこそすまなかった。ひとりで出産も子育てもして、大変なんてものじゃなかっただろうに」
「なんで誠一さんが謝るんですか。全部私が選んだ道なんだから、いいんですよ」
「いや、そもそも離れなきゃいけないと君に思わせてしまったのがいけないんだ。俺が未熟だったんだよ」

 決してそんなことはないのに気を遣った言葉をかけてくれるので、私は首をぶんぶんと横に振った。

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