魅惑の航空王は最愛の元妻を取り戻したい
「だから、経営を立て直すことで周りの人間を認めさせて、なんの文句も言わせないくらいの力をつけようと決めた。いつか芽衣子を取り戻して、今度こそ幸せにするために」

 誠一さんの声に力強さが戻ってドキリとする私に、彼はおもむろに左手を見せてくる。その薬指には今も色褪せないリングが輝いていた。

 懐かしい指輪……私に会うからつけてきたのだろうかと、胸が温かくなった直後に彼は言う。

「俺は二年間、この指輪を外していないし、離婚も公表していない。ほとんどの社員は、俺たちはまだ夫婦だと思っている」

 予想外の事実に私は目をしばたたかせ、「えぇっ!?」とすっとんきょうな声をあげてしまった。慌てて口を押さえ、恵茉の様子を伺うも起きた気配はない。

 まさか、まだ結婚しているように偽っていたなんて。そんなことをするメリットが誠一さんにあっただろうか。

「なんでですか……!? 私との関係を絶てば、根も葉もない疑惑を払拭できて、もっと業務がやりやすくなったはずなのに」
「夫という立場でいれば、芽衣子を守り続けられるからな。君はそれすらも負担になると思っていたようだが、この通り問題はなかったよ」

 したり顔で言われ、シャツの胸元を掴んでいた私はへなへなと脱力した。

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